蕎麦(そば)
蕎の麦(ムギ)の意味。ムギと同じく穀物のひとつと考えられていた。「蕎」という字に含まれる「喬」という文字には高いという意味があるので、背の高いムギという意味だったのかもしれない。
蕎麦という言葉がいつごろから使われていたのかはわからないが、中国は梁の時代(5〜6世紀)の文献に「蕎麦」の文字が見られるという。また詩人の白居易(772〜846年)は「月明蕎麦花如雪」と詠んでいる。月は明るいし蕎麦の花は雪みたいだなぁという意味。
日本では養老六年(722年)に元正天皇が「晩禾・蕎麦・大麦・小麦」を植えるようにと詔を出したと『続日本紀』にある。これが記録に残っているものとしてはかなり古い例ではないかと思うが、それ以前にも知られていたはずである。
また、延喜十十八年(918年)『本草和名』に被牟岐(そばむぎ)という表記でソバがとりあげられている。
黒麦(くろむぎ)
ソバの古名。ソバは麦の仲間で黒いものだと考えられていたのだろう。延長八年(930
年)『倭名類聚抄』に久呂無木という表記がある。
稜(そば)
角張っていること。ソバとの関係はよくわからないがソバもまた角張った実をつける。「優婆塞が行ふ山の椎が本あな稜稜し床(とこ)にしあらねば」(『宇津保物語』菊の宴)。
稜栗(そばぐり)
ブナの木のこと。実に角があるのでそう呼ばれる。
「蕎麦」を日本でソバと呼ぶのは実に稜(そば)があるためだろうか。学名でもソバ属のことをブナの実に似た麦と呼んでいる。偶然にしてはできすぎた一致。
蕎麦の木 または 稜の木(そばのき)
ブナの木の古い名前。
また、カナメモチの古名でもあるが( インフォシーク・大辞林
)どのあたりが「稜」なのかよくわからない(参考>植物園へようこそ・ベニカナメモチ)。
Fagopyrum esculentum
ソバの学名。fagopyrum はブナの実に似たムギという意味。esculentum
は食用になるということ。
Fagopyrum tartaricum
ダッタンソバの学名。tartaricum はタタール(ダッタン)の、という意味。
Fagopyrum cymosum
シャクチリソバ(シュクコンソバ)の学名。cymosum
は集散花序の、という意味だと思う。集散花序というのはごくごく大ざっぱに説明すれば小さな花が集まって花穂を作るもののことだが、厳密にはさまざまな形態があって説明しにくい。
buckwheat
ソバを意味する英語。wheat はムギのこと。buck
は跳ねる、もしくは 雄 という意味だが、どちらなのかよくわからない。
シャクチリソバ(赤地利蕎麦)
草も木も生えないような荒れ地に便利ということで、どこにでも生える丈夫なソバという意味。
蕎麦滓(そばかす)
顔にできるごく小さな茶色の斑点。雀斑と書くことが多い。真夏の太陽をあびると増えるため夏日斑(かじつはん)、スズメの卵の模様に似ていることから雀卵斑(じやくらんはん)ともいう。
思春期の少女にできることが多く、そばかすのある女の子といえば、健康的で明るい子といった印象がある。アニメ『キャンディ・キャンディ』の主題歌にも「そばかすなんて、気にしないわ」と歌われている。
蕎麦殻(そばがら)
ソバ粉をとったあとに残る固くて黒い殻のこと。軽くてしっかりしているので枕に詰めるなどして使う。これのことを蕎麦滓ともいう。
蕎麦祖神、蕎麦天皇
天正天皇のこと。大規模な蕎麦の栽培を行ったことから。