和名 | モンクロシャチホコ(紋黒鯱 または 紋黒天社) |
別名 | フナガタケムシ シリアゲケムシ サクラケムシ(すべて幼虫) |
中国名 | 蘋掌舟蛾 |
科名 | シャチホコガ科 |
学名 | Phalera flavescens |
出現期 | 年 1 回 8〜10月
(年 1〜3 回 6〜10月 とも言われてる) |
食草 | サクラ類・ナシ・ウメ・モモ・リンゴ・スモモ・ユスラウメ(バラ科)など |
採集地 | 東京都葛飾区 |
1999年9月4日撮影 |
黒い頭、赤黒い体で白い毛を持つ毛虫。ボケの木(バラ科)にいっぱいたかってました。体の長さは5Cmくらいかな。 写真を何人かの観察師(なにそれ)に見せたら、みんな口をそろえてチャドクガだって言うんです。でも、珍獣調べによると、チャドクガの食草はツバキやサザンカなので、ボケの木にいるのはちょっと変。 |
他人は頼りにならないわっ、自分で調べなきゃだわっ。めらめらめら……(やる気が燃える音)。←乙女なんだから毛虫にやる気を燃やすなよ。
けど、どうやって調べよう? 図書館にいけば蝶や蛾の幼虫写真を集めた図鑑があるけど、ただページをめくってみてるだけじゃ、どうしても見落としてしまうんです。何の仲間なのか、大ざっぱにでもわからないもんかしら。 みんなが言うなら、やっぱりドクガの仲間? うーん、でもちょっと待って。 よくよく見ると、この子たち、みょーなポーズ付けてない???! |
この子は上の写真から3日後に撮したものです。同じ種類の虫だけど、ちょっと雰囲気が違うかも。 それもそのはず、この子は一皮むけて、皮1枚分おとなになったばかり。近くに脱げた皮もありました。 このかっこ、やはりこの子の決めポーズなんです。頭と尻尾をかきんと折り曲げて体を反らせてるみたい。よく見ると、上の写真の子も尻尾をあげてるのがいます。 なんだか緊張して固くなってるみたい。こういうポーズ、「しゃっちょこ張ってる」なんて言わない? ちゃっちょこ張る、しゃちほこ張る、鯱張る?! あ、わかった! こいつ、シャチホコガの幼虫だー!! |
1999年9月7日撮影 |
しゃちほこ(鯱)
顔が竜みたいな魚で、お城の天守閣にいたりする。名古屋の金のしゃちほこが有名。 シャチホコガの幼虫は、シャチホコみたいに頭と尾をふりあげるポーズが得意。しかも、竜のヒゲみたいな立派な刺を持つ種類もあるぞ。 |
そこまでわかれは話は早いはず。図書館にすっとんで行って図鑑をひらきました。保育社「日本蛾類幼虫図鑑」というやつ。
ところがところが。シャチホコガのページを見ると、それらしいのがいないんですよ。たしかに「頭と尾をあげて静止する」のが特徴の毛虫はいるんだけど、この写真とは色がちがうんです。この子は皮膚が赤黒いのに、図鑑に載ってるのは、黒いのとか、模様のあるのとか、印象がぜんぜん違います。 あれ、ハズレ?? 仕方ないので、図鑑の写真をひとつひとつ丹念に見てみたけど、やっぱりそれらしいのはいないみたい。 ううむ、なぜっ。 「捜査に行き詰まったときは現場に戻れ」と昔の人も言ってることなので、もう一度、実物を見に行きました。 すると…… |
1999年9月7日撮影 |
はっ……上の写真と同じ種類の虫みたいだけど体が黒いぞ。これなら図鑑に出てる写真と同じだ〜!! どうやら、図鑑には終齢幼虫の写真が載っていたのです。この虫は、若い頃には赤黒くて、終齢幼虫になると黒っぽくなるんです。黒くなると幼虫時代は終わり。蛹になって蛾になります。 図鑑によれば、種名はモンクロシャチホコ。成虫はあんまり目立たない蛾のようです。白っぽい翅に、羽織の紋みたいに黒い●がついてるから「紋黒」で、幼虫時代にしゃっちょこばってるから「鯱(しゃちほこ)蛾」。なんてわかりやすい和名。独特のポーズの幼虫は、舟形虫とか尻上げ虫とも言うそうな。サクラの木に良くつくので桜毛虫ともいわれるらしい。 蛾の幼虫には地下で蛹になるのと、地上で繭をつくるのと2種類いますが、モンクロシャチホコは地下生活派。この子ももうすぐ地下に潜って蛹になるのでしょう。 |
9 月の中頃に小石川植物園に行きました。サクラの林を歩いていると、足下で黒っぽいものがうねうね動いてます。見ると、下の写真のような毛虫でした。 2003年9月17日 小石川植物園にて 体長は 50mm くらい。絶妙な太さのせいか、実際の長さよりも大きく感じられます。体は黒っぽく、黄みがかった長い毛がまばらに生えてました。たぶんモンクロシャチホコの終齢幼虫です。蛹(さなぎ)になるために移動しているところでしょう。 ということは、同時期に卵からかえった幼虫も蛹になるはずですから、他にもたくさんいるんじゃないのかな…とあたりをみまわしたら、うはあ、いたいた。
太い桜の木の幹に、このような毛虫がいるわいるわ、ぱっと見ただけでも 5 匹はいたので、目のとどかない高いところなどにもっとたくさんいるはずです。どの毛虫もまるまる太って、地面をめざして下へ下へと移動していました。 |
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