鳥呑みじじい
 

 おじいさんが畑仕事をしていると、うつくしい鳥がとんできて、鍬(くわ)の柄にとまってなきました。

「おちゃんぴんぷう」

 おかしな声でなく鳥もあったものです。けれど、その声をきくと不思議とゆかいな気分になります。

 おじいさんは、その鳥をつかまえてやろうと、お昼に食べようともってきたお餅を鍬の柄にくっつけて、そっとようすを見ていました。

 すると、またあの鳥がとんできて、鍬の柄にとまりました。鳥はお餅に足をとられ、ばたばたもがいているうちに、羽にも餅がくっついてしまいました。

「これこれ、あばれるな。今とってやるからのう」
おじいさんは、鳥にくっついたお餅をさいしょは手でとっていましたが、べたべたしてとりきれないので口でなめとっているうちに、まちがって鳥をのみこんでしまいました。

 鳥はおじいさんの腹のなかであばれているうちに、しっぽだけヘソから出てきました。
「おや、こんなところから出てきたぞ。そりゃ、ひっぱり出してやろう」

 おじいさんは鳥のしっぽをひっぱりましたが体がつかえてヘソからでは出てきません。鳥はくるしくなっておじいさんの腹の中でなきました。
「おちゃんぴんぷう」

 こりゃあおもしろい、ばあさんにも見せてやろうと、おじいさんは家にとってかえして、
「おい、ばあさんや、今そこでおかしな鳥をのみこんでのう。とにかくこれを見ておくれ」
といって、ヘソからとびだしたしっぽをひっぱりました。
 すると、おじいさんの腹の中で鳥がなきます。
「おちゃんぴんぷう」

 おばあさんは大よろこび。
「こんなゆかいなものは、みんなにきかせてやりましょう。もうすぐお殿さまが江戸からかえってこられます。そこの街道をお通りになるはずだから、ちょいとでかけておきかせしてはどうでしょう」
というので、街道ぞいの木にのぼってお殿さまが通るのをまっていました。

 下に下にという声とともに、お殿さまの行列がやってきます。先ばらいのお侍がおじいさんを見て、
「おい、そこのじじい。一体なんのつもりだ」
と、いいました。
「へえ。わしは天下一の歌いじじいでございますだ」
おじいさんが、そういうと、お殿さまがききつけて、
「なら、歌ってみろ」
と、いいました。
 そこで、おじいさんはヘソから出たしっぽをひっぱると、腹のなかからひときわたかい声で鳥がなきました。
「おちゃんぴんぷう」
 お殿さまは大笑い。おつきの侍たちも笑いだしました。

 おじいさんは、やっと背負えるほどたくさんのご褒美をお殿さまからもらって、えっちらおっちら家にかえっていきました。
 

 
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