屁こきじじい
 

 あるところに貧乏なおじいさんがいました。貧乏で食べるものがなくて、芋のしっぽみたいな粗末なものばかり食べていたら、どうしたことか大きな屁(へ)がでてしかたがなくなりました。

「ばあさん、やたらと屁が出てたらまらんわい。それ一発、ぴーひゃらら」
「いやですよう、おじいさん。まるでお祭りの笛みたい」
「そういえばそうだな、よし、もう一発、ひゃらりらぴー」

 そうしたある日、お城のお殿さまが領地を見においでになりました。おじいさんはお殿さまの行列がやってくると、尻をまくっていいました。
「わしは日本一の屁こきじじいでございます。ゆかいな屁をひってごらんにいれますぞ。そーれ」

  ぴー ぴー ぴーひゃらら
  ぶっぶくぶーの ぴーよぴよ
  ひゃらりらぴーの ぴーひゃらら
  ぴっぴきぴー ひゃらひゃらぴー

 おじいさんの屁は、祭りのおはやしのようになりました。お殿さまはたいへんおよろこびになって、おじいさんにご褒美をたくさんくれました。

 この話をきいた、となりの家のじいさんは、
「屁っこきなら、わしだって負けはせんぞ」
といって、次の日お殿さまの行くところへ先まわりしてまっていました。

 お殿さまがやってくると、
「わしは天下一の屁こきじじいでございますだ。これからゆかいな屁をひってごらんにいれますぞ。そーれ」
と、尻をまくって腹に力をいれると、

  ぶりぶりぶりぶりっ

 いきおいあまって屁ではなく糞(くそ)をひってしまいました。これにはお殿さまは大いかりで、おじいさんをつかまえて、牢屋にいれてしまいました。
 

 
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