笑う髑髏(どくろ)
 

 ある男は、若いころ追いはぎをしてくらしていました。旅人をおそって殺しては、金目のものをうばっていたのです。

 やがて男は年をとって、そろそろまっとうな生活をしようと考えました。そうしたある日、人気のない山道でケラケラと笑う声がするので、あたりをみまわすと、髑髏(どくろ)があごの骨をかたかたいわせながら、大口をあけて笑っているのでした。

 これはよい見せ物になると、男は髑髏をひろって町へいき、人をあつめては髑髏の高笑いをみせてお金をとっていました。そのうち笑う髑髏の評判がお城にもとどき、お殿さまからぜひ見たいとのお声がかかりました。

 男はお殿さまの前で、髑髏に笑えと命令しましたが、どうしたことか髑髏は笑いませんでした。
「ええい、どうした。笑え、さあ、笑うんだ」
髑髏をたたいたり、ゆすったり、なんとかして笑わせようとしましたが、髑髏はくすりとも笑いません。

 とんだインチキだと、おこったお殿さまは、家来に命じて男の首をはねさせました。
 すると、さっきまでうんともすんともいわなかった髑髏が、とつぜんカラカラと笑いながら、
「仇をうったぞ。わたしをこんな姿にした追いはぎはこの男だ」
と、いいました。
 

◆こぼれ話◆

 笑う骸骨とも。笑うのではなく歌う場合もある。つのだじろうの『恐怖新聞』にもこれを漫画化したものがあったと思う(表題とはあまり関係のない埋め草だった気もするので、すべての単行本に収録されているかどうかわからない)。
 

 
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