黄金の瓜 |
むかし、佐渡島のある村に、丸木をくりぬいてつくった舟が流れつきました。中にはうつくしい娘がいて、今にも死にそうによわっていました。 おじいさんとおばあさんは、娘を家につれてかえり、まるで自分の娘のように親身になってかいほうしてやりました。やがて娘は元気をとりもどし、自分のみのうえを語りはじめました。 「わたしは、さる国の殿さまにつかえていたものですが、ささいなことで罪をとわれ、島流しになったのでございます。行くあてもありません。どうかここにおいていただけませぬか」 おじいさんとおばあさんには子供がありませんでした。そのような気の毒な身の上ならば、これからは自分たちの子になってほしいと、娘を家においてやることにしました。 ところで、この娘は、島流しになる前から身ごもっていて、やがて月が満ちると元気な男の子を生みおとしました。 男の子はこれといって病気をすることもなく成長し、七つになりました。ある日、しんみょうな顔をして、
すると、母親はかなしそうな顔をしていいました。
それからというもの、息子は自分を大阪へやってください、と何度もせがみました。母親も、息子の熱心さにまけて、一朱金を一枚わたして旅に出してやりました。 大阪につくと、息子は一朱金を石でたたいて細かくすると、城のまわりで大声をはりあげて、
それが殿さまの耳にもはいり、息子は城にまねかれて、殿さまに会うことになりました。 殿さまは、種をごらんになって、
殿さまは、屁をこかぬ者などあるわけがないと、怒りだしましたが、男の子は一歩もひかず、
それで殿さまも、この少年が自分の息子だと気がついて、ささいなことで后を罰してしまったことを恥ました。 男の子は殿さまの世継ぎとしてお城にむかえられ、母親もよびもどされ、しあわせにくらしたということです。
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◆こぼれ話◆
丸木舟で流されてくる貴人の話は多い。竹取物語でかくや姫が竹からうまれるのも、丸木舟の変形と思える。 そういえば、丸木舟に乗ってくる貴人が最後にお蚕さんになる話がある。身分の高い人が何かの罪で流罪になって再びかえり咲く様子は、芋虫→蛹(繭)→成虫と変化する蛾の一生と重なって見えるのだろうか。一発逆転の魔法には「繭」が必要なのかもしれない。それが丸木舟であり、かぐや姫の竹である。 |
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