鼠(ねずみ)には年ごろの娘がいました。だいじにそだてた娘ですから、嫁に出すなら強くりっぱな男でなければと思いました。
そこで、太陽のところへ行って、
「お天道さま、あなたはこの世でいちばんえらいお方です。どうか娘を嫁にしてやってくださいませんか」
と、いいました。
すると、太陽は
「鼠よ、残念だが、この世にはわたしよりずっと強い者がいる。雲をごらん。あの雲にさえぎられたら、わたしの光は地上にとどかなくなってしまうのだよ」
と、いいました。
そこで鼠は雲のところへ行って、
「雲さん、あなたはこの世でいちばんえらいお方です。どうか娘を嫁にしてやってくださいませんか」
と、たのみました。
すると、雲はいいました。
「鼠さん、残念ですが、この世にはわたしよりずっと強い者があります。風にふかれたら、わたしなんかとばされてしまいますよ」
鼠は風のところへいくと、娘を嫁にもらってくれるようにたのみました。すると、風は、
「鼠さん、そういうことならこの世でいちばん強いのは壁(かべ)ですよ。わたしは壁をつきぬけてふくことができませんから」
と、いいました。
鼠は壁のところへ行って、娘を嫁にもらってほしいとたのみました。すると壁は、
「はっはっは、なにをおっしゃるのですか。この世でいちばん強いのは、鼠さん、あなたたちのことだ。鼠さんたちは、わたしたち壁をかじって穴をあけるじゃありませんか」
と、いいました。
それで鼠は、娘にいちばんふさわしいのは、鼠の男だと気がついて、立派な鼠の若者を、娘の婿にすることにしましたとさ。
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