ねずみ浄土
 

 むかし、貧しいけれど、人のよい老夫婦がいました。ある日、おじいさんは山にしばかりに行くというので、おばあさんはおにぎりをつくってもたせてやりました。

 お昼になると、おじいさんはお弁当のおにぎりをだして食べようとしましたが、手がすべってころがしてしまいました。おにぎりは、どこまでもころがっていって、地面にあいた、小さな穴に落ちてしまいました。

 おじいさんが穴をのぞきこむと、きゅうに穴が大きくなって、おじいさんをぱっくりのみこみました。気がついてみると、そこは鼠(ねずみ)の国で、たくさんの鼠たちが歌いながらぺったらぺったらと、餅をついているのでした。

 びっくりして見ていると、鼠が一匹こちらへやてきて、
「おじいさん、先ほどはありがとうございました。おにぎりを落としてもらったおかげで、こうして餅をつくことができました。今日はゆっくりあそんでいってください。

 こうして、おじいさんは鼠の宴会にまねかれて、おいしいものをたらふくたべて、しまいにはお礼だといって、お金までもらってかえりました。

 この話をきいた、となりの家のじいさんは、そんなら自分もまねしてみようと、おにぎりをもって山へしばかりに行きました。そうして、鼠の穴をみつけると、おにぎりを落として、自分もむりやり穴にはいって行きました。

 穴の中では鼠たちが餅をつきながら歌っています。

  それつけ やれつけ ぺったらこ
  にゃあごと鳴く声 ききたくねえ

 それを聞いた、となりのじいさんは、
「ははん、鼠だから、猫の声がきらいだってわけか。なら、ひと声ないておっぱらえば、鼠の宝をひとりじめできるかもしれんな」
と思って、にゃーご、と猫のなきまねをしました。

 すると、鼠たちはチュウチュウいいながら、いっせいににげてしまい、あたりは真っ暗になりました。

 となりのじいさんは、どこに出口があるのかもわからなくなって、暗い穴の中をさまよっているうちに、モグラになってしまいました。
 

◆こぼれ話◆

 「おむすびころりん」というタイトルでも知られている。
 つっこみどころを間違っているかもしれないが、「おにぎりで餅をつく」というのが美味しそうで、そこばかり気になってしまう。
 

 
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