竜宮女房 |
昔、貧乏な若者がおっての。 病気の母親にうまいものでも食わしてやろうと、山で花を摘んで売りに行ったんだと。 ところが、いくら売り歩いても誰も買ってくれん。 売れ残った花を持ち帰っても仕方がないと、 「竜宮の神様に届きますように」 と、海へ流したんだとさ。 すると波間から亀が出てきて 「竜宮では花を切らしてこまっておりました。お礼におもてなしいたしましょう」 と、若者を背中に乗せて海にもぐっていったんだと。 海の底へ向かう道々、亀が言うんだと。
竜宮につくと、美しい魚たちが若者を歓迎してくれたんだと。
若者が嫁さまを連れて帰ると、家の様子がおかしい。
それから嫁さまは打出の小槌でぼろ屋を新しくして、食べるものや着るものを出してくれたんだと。おかげで若者は、おっかさんにも楽させてやれるようになったし、毎日しあわせにくらせるようになったんだと。 そのうち美しい嫁さまのうわさがお城の殿さまの耳にもとどいてのう。
殿さまは驚いて、
いたずらを見破られた殿さまは、このかしこい嫁をどうしても自分のものにしたくなって、
殿さまも家来も小人たちに殺されてしまったので、それからは若者が殿さまになって、お城で幸せにくらしたということじゃ。
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◆こぼれ話◆
「鼻たれ小僧」にも似ているが、結末は「絵姿女房」に似ている。絵姿女房は殿さまにさらわれてしまうが、殿さまをうまくだまして城から追い出し、もとの夫を城主にしてしまう。 この手の昔話は世界中にある。 イスラエルの昔話では、若者がある事情から美しい妖精を妻にする。若者の父親が嫁の才覚をためそうと無理難題をふっかけてくるが、そのたびに妖精は不思議な力で切り抜ける。若者の兄が妖精を自分のものにしたいと悪い企みを抱くが、妖精はいち早く察知して姿を消してしまう。「鉄の靴を履いて私をさがしてください。靴の底がすり切れる頃に、きっと再会できるでしょう」と言い残して。その言葉通りに再会して幸せに暮らす。 また、シベリアの昔話では、ある男が狩りにゆくと白鳥が皮をぬいで人間の娘になり水浴びをしているのを見る。男は白鳥の皮を隠して娘を嫁にするが、悪い王様がこの娘を気に入って、男に無理難題をおしつけ、果たせなかったら妻を差し出せと要求する。けれど、妻の不思議な力で切り抜けて、最後には王様をやっつけて国を自分のものにする。 |
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