鬼と山伏 |
むかし、ある山に乱暴ものの鬼がおってのう。ふもとの村におりてきては、お百姓さんが大事にしている牛や馬をぶち殺したり、畑のものを盗んで食べておったんだと。 このまんまじゃ暮らしていけなくなるというので、村人たちはえらい山伏を呼んできて、鬼を退治してくださいとたのんだんだと。 ちょうどその頃、村では麦が実って、村中の畑で麦の穂がさらさらと風になびいておったんだと。そこへ鬼がやってきて、麦畑を踏みあらして遊び始めたんだと。 そこで山伏は、鬼に近づいていって、
次の日、鬼がやってくると、山伏は酒をふるまい、酒の肴(さかな)だといって、自分の皿には豆腐とタケノコを、鬼の皿には白い石と輪切りにした竹を盛って出したんだと。 山伏がうまそうに豆腐とタケノコを食っているのを見て、鬼も自分の皿のものにかじりついたが、石はガチンガチン、竹もゴチンゴチンでちっとも歯が立たない。 鬼はすっかりおどろいて、
鬼は心の中で「今まで馬鹿にしておったが人間というのはとんでもない力を持っているのかもしれん」と思って、落ちつかないそぶりでそわそわしておるんだと。 それを見た山伏は、
そこは昨日、鬼が踏みあらして遊んでいた畑だったが、すっかり刈り取りがすんできれいに耕してあったんだと。 それを見た鬼は人間が地べたをひっぺがして裏返しにしたのだと、本気で思いこんで、
それからは、この村に鬼が出ることはなくなったということじゃ。
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