豆腐屋のなぞかけ |
その寺の和尚さんは謎かけが苦手だった。 ある日、寺に雲水さんがやってきた。
雲水さんは和尚さんの顔を見ると、いきなり指で丸をつくって見せた。
和尚さんは、何食わぬ顔で「しばしまたれよ」と答えて奥へ引っ込んでしまった。 「こりゃ困ったのう。あの雲水は『日輪は?』とたずねておるのだろうが、どう答えていいやらサッパリわからん。
和尚さんが困っていると、豆腐屋さんがやってきた。
「おや、豆腐屋さん、いいところに来てくれた。
「へえ、あっしでよければやってみやしょう」 そこで豆腐屋さんは表へ出て行って雲水さんに挨拶をした。 「当寺住職の弟子でございます。私がお相手させていただきましょう」 雲水さんは、だまってうなずくと、片手の指で丸を作って見せた。これは「日輪は?」という問いである。
すると雲水さんは少し驚いた顔をした。豆腐屋さんの答えを「世界を照らす」という意味だと思いこんだのだ。
これを見た豆腐屋さんは五本出した。
最後に雲水さんが指を三本出した。「三千世界は?」という問いである。仏さまがお救いになる、無数の世界とはどういうものかとたずねたのだ。
この様子を見ていた和尚さんは、何がなんだかさっぱりわからず、
すると豆腐屋さんは、
するとヤツは、両手の指を出して十文かって聞きやがる。
するとヤツは、指を三本出して三文にしろって言いやがった。
和尚さんはこれを聞いて、豆腐屋も雲水も、なんと知恵のまわることかと驚いた。
|
◆こぼれ話◆
話自体はおもしろいのだが、謎かけの解釈がむずかしすぎて、普通に読んできかせても面白くはなさそう。そもそも、書いてるわたくしも雲水の謎の本当の意味がよくわからない。
Q「(片手で丸をつくり)日輪は?」と解釈したとだけ書いてあって、なぜ三千世界が目の中にあるのかは説明されていなかった。しかし、あまりにも意味が通らないので適当に解釈を書き加えてみたのだが、実際のところこれでいいのかどうか。 おそらく、謎解きの解釈はどうでもよくて、雲水と豆腐屋の身振り手振りを大げさに真似てみせるのがこの話の面白いところなのかもしれない。かなりの演技力を要求される難しいお話だと思う。これで聞き手を喜ばせられたら、あなたは立派な語り名人。
|
|目次|珍獣の館|山海経|博物誌|直前に見たページ| |
|