手まめ足まめ
 
 
 むかし、あるところに豆づくりの好きな男がいて、家の前の畑でいろんな豆を作っては、大黒様におそなえしていたんだと。

 ある時、男が大黒様に、
「おらもそろそろ嫁っこをむかえてえだ。よい嫁っこをさずけてくだされ」
と、祈願していると、夢枕に大黒様があらわれて、
「豆っこを百色集められたら嫁も与えるし長者にもしてやるぞ」
と言うんだって。

 それから男は必死になって豆をつくり、暇さえあればあっちの村、こっちの村と訪ね歩いて新しい豆をさがしたんだと。
 やっとこさ、九十九色まで集めたが、どうしてもあと一色みつからない。
 男は疲れきって大黒様に手をあわせ、
「おら、頑張っただどもあと一色たりね。もうしわけねえこった」
と、拝んでいると、大黒さまがあらわれて、
「豆ならそら、お前の手足にあるじゃないか。それで百色だ」
と言ったんだと。
 男の手足には、働いてできた豆があった。

 まもなく男にはいい縁談があって、美しい嫁っこをもらうことになった。
 どんどん運も向いてきて、いつの間にか村いちばんの長者にもなったということじゃ。
 

 
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