狐と熊がいっしょに畑をつくることになり、力のつよい熊が畑をたがやしているあいだに狐が野菜のたねを買ってくることにしました。
狐が帰ってくると、もうすっかり畑はできあがっています。
「さすがは熊さん、わたしじゃこうは行かないや。
ところで、こういうことはさいしょにきめておいたほうがいい。野菜のとりぶんのことなんだが、わたしは地面の下をとるから、熊さんは上をとるってことでどうだい」
すると熊はこういいました。
「ふむ、狐どんが根っこで、おらが葉っぱをとるだな。わるくない。そうしよう」
それから二匹は狐がかってきたたねを畑にまきました。
しばらくして、畑にできたのはカブでした。
カブは、葉っぱもたべられますが、ほんとうにおいしいのは丸くて白い根っこです。
狐は、さいしょの約束だからといって、おいしい根っこをぜんぶ自分のものにしました。あとに残ったのは葉っぱばかり。熊はがっかりしましたが、約束ならしかたないと、カブの葉っぱをもって帰りました。
二、三日たって、また狐がやってきました。
「熊さん、またいっしょに畑を作ろうとおもうんだがどうだろう」
熊はかんがえました。このまえは狐にまんまとしてやられたので、こんどは自分でとりぶんをきめてしまおうと。
「そりゃかまわないが、こんどは狐どんが地面の上をとってくれ。おらは根っこのほうをとる」
「いいとも。それじゃ、またわたしがたねを買ってくるから、熊さんは畑をつくっておいてくださいよ」
「ああ、わかったよ。すっかりやっておくよ」
熊が畑をたがやしおえるころに狐がもどってきたので、二匹でたねをまきました。
しばらくして、畑にはえてきたのは大豆でした。狐はやくそくだからといって、豆をぜんぶ自分のものにしました。あとにのこったのは根っこばかり。けれど、とりぶんをきめたのは自分なので、熊は泣く泣くあきらめました。
しばらくして、また狐がやってきました。
「熊さん、こないだは気の毒したね。さすがにわたしも反省したよ。
今日はそのおわびに来たんだが、熊さんはハチミツがすきだったね。あっちの森にミツバチが大きな巣をつくっているのをみつけましたよ。誰かにとられるまえに、熊さんにしらせようと思って、あわてて走ってきたんですよ」
それをきいて、熊はしたなめずりをしました。
「狐どん、はやくあんないしておくれよ。誰かにとられちゃたいへんだ」
「よしきた、こっちだよ」
狐のあんないで森まで来てみると、高い木の上に大きなハチの巣があり、ミツバチがぶんぶん音をたててとびまわっていました。
「わたしは木のぼりができないから、熊さんがとってきてくださいよ」
「おお、わかった。木のぼりならお手のものさ」
熊は木をよじのぼってハチの巣をたたきおとしました。
おこったミツバチが仲間をあつめて熊におそいかかりました。
「いててて、このハチめ。あっちへいけ」
熊がハチとたたかっているすきに、狐はハチの巣をくわえてにげていきました。
熊はやっとのおもいでハチをおっぱらい、狐の家までいきました。
「狐どん、ひとりでにげるなんてひどいじゃないか」
熊がそういうと、狐はすました顔でいいました。
「熊さん、それはちがうよ。ハチの巣を地面にころがしておいたら、せっかくの蜜が流れだしてしまうじゃないか」
「そうか、そりゃ気がつかなかったよ。狐どんはいつだって細かいことに気がまわるんだな。
それで、ハチの巣はどうしたんだい?」
狐はきゅうにかなしそうな顔をしていいました。
「ああ、熊さん。きいてくださいよ。
ここへくるとちゅうに小川があったでしょう。わたしがハチの巣をくわえてはしっていたら、きゅうに魚がはねたのでびっくりして、ハチの巣を川におとしてしまったんですよ」
もちろん、そんなのは狐のうそです。狐は熊がハチとたたかっているあいだに蜜をすっかりなめてしまったのです。けれど気のいい熊は狐のいうことを信じて「そういうことならしかたがない」とあきらめました。
しばらくして、狐が熊の家をたずねると、熊はおおきな馬をつかまえてきて食べていました。
「やあ、熊さん。すばらしいごちそうですね。わたしにもちょっぴりわけてくれないかな」
熊は、これまでの狐のしうちを思い出して、すました顔でこういいました。
「狐どん、馬ならかんたんにつかまえられるから、あんたもやってみるといい。馬をみつけたら、逃げられないように馬のしっぽを自分のしっぽにむすびつけてしまうんだ。それから馬のうしろ足におもいっきりかみつけば一発さ」
「ふーん、そんなことならかんたんだ。ところで馬はどこにいる?」
「あっちの牧場にたくさんいるよ」
「わかった、ちょいといってきますよ」
狐はおいしい肉がたべたくて、牧場までかけってくると、熊のいうとおり馬のしっぽと自分のしっぽをむすびました。それから馬のうしろ足に力いっぱいかみつくと、馬はおどろいて狐をぽーんとけりとばしました。
すると、むすびつけてあったしっぽがぴーんとのびて、ブチっと音をたてて切れてしまいました。狐のからだはとおくまでとんでいって、岩にあたって死んでしまいました。
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