狐のお札 |
ある寺に、男の子がたずねてきて小僧さんにしてほしいと言いました。 小さいのによくはたらく小僧さんで、和尚さんが仕事をいいつける前に、そうじでも、せんたくでも、なんでも自分からやってしまいます。本当にいい小僧さんが来てくれたものだと、和尚さんは心からよろこびました。 ところが、小僧さんにはたったひとつ、欠点がありました。
ある夜、あんまりうるさいので、和尚さんは小僧さんの部屋をそーっとのぞいてみました。 するとどうしたことでしょう。小僧さんの尻にはふさふさと毛のはえた、立派なしっぽがはえているではありませんか。 和尚さんはびっくりしましたが、それでも小僧さんをおこさないように、そっとふすまをしめて部屋を出ました。 翌朝、和尚さんの部屋に小僧さんがやってきて、きちんとすわってていねいに頭をさげるとこう言いました。
「それがどうしたのじゃ。わしはお前が狐でもいっこうにかまわんがのう」
「はばかりながら、ここいらにはあっしより化けじょうずの狐はおりやせん。
「はて、そんなお札があったかのう」
狐がしんけんな目をしてたのむので、和尚さんもなんとかしてやろうという気になりました。
「そんなことならお安いごようで。お釈迦さまの行列をおめにかけやしょう。
そういって狐はぴょんととびあがって、くるりとまわりました。
あまりにうつくしい光景なので、和尚さんはおもわず手をあわせて「もったいないことじゃ…ありがたいことじゃ…」と、拝みはじめました。 そのとたん、桜の花も、お釈迦さまの行列もきえてしまいました。
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