月からふった餅
 
 
 むかしむかし、人間がいまよりずっと少なかったころのお話。
 神さまは、海のうえに美しい島があるのをみつけて、ここに人間をすまわせようとおもいました。そこで、男の子と女の子を島におろしました。

 神さまは、子供たちがおなかをすかせないように、夜になると月からお餅をおとしてやりました。お餅は毎日たくさんおちてきます。ふたりは好きなだけお餅をたべて、たべのこしたものはほうっておきました。

 あるとき、子供たちは考えました。
「今は神さまがお餅をふらせてくれるからいいけれど、いつかあのお餅がふってこなくなったら、僕たちはどうしたらいいんだろう」
「お餅なら、毎日たくさん落ちてくるから、明日からはカゴにあつめて、とっておくことにしましょう」

 次の日から、子供たちはたべのこしたお餅をとっておくことにしました。
 すると、その次の日から、いくら待ってもお餅がおちてこなくなりました。
 とっておいたお餅があるので、しばらくはこまりませんでしたが、やがてたくわえもなくなり、子供たちはおなかがすいて死にそうになりました。

 子供たちは、浜辺にいき、貝や魚をとって食べてみました。それは神さまが月からおとしてくれるお餅とおなじくらいおいしかったので、ふたりはむちゅうになって食べました。

 それからというもの、人間は食べるために魚をとったり、畑をつくったりしてくらすようになりました。
 

 
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