外法人形
 
 
 ある人が川を見ていると、板きれに人形がのったのが流れてきました。

 かわった人形だと思い、ひろってもちかえると、人形はとつぜん口をきいて「明日はどこそこのとしよりが死ぬ」だの「なくしたものは高いところから出る」だの、かってに占いをはじめました。

「ははん、これは祈祷師がつかう外法人形というやつだな」と思って おもしろがって、いろんなことを占わせていましたが、人形は夜どおししゃべりつづけるのでうるさくてかないません。

 どこかに捨ててこようと思いましたが、ふしぎな力のある人形をすてたりしては、たたりがあるのではないかと思い、もの知りと評判のたかいおとしよりに相談すると、

「それなら、ひろったときと同じように板にのせ、川にもってゆくがいい。それから、川を背にして立ち、うしろでに板きれを川にうかべなさい。そうして、いつ流したとも知らぬうちに手をはなして、後ろを見ずに立ちさればさわりはない」

と、おしえてくれました。

 そこで、その通りに人形をすてたところ、悪いことは何もおきなかったということです。
 

 
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