蟹の甲羅
 
 
 おじいさんはうらの池に住む蟹(かに)をかわいがっていました。けれど、おばあさんは蟹なんかかわいがってもしかたがないと、おじいさんが町へ行っているあいだに蟹をとって食べてしまいました。

 おじいさんは町から帰ってくると、いつものようにご飯をもってうらの池にいきました。
「さあ、蟹たちや、ご飯をたんとおあがり」

 そういって、おじいさんは池にご飯をまきましたが、どうしたことか一匹も蟹がよってきません。

 すると、どこからともなくカラスがとんできて、
「こーらは垣根、身は婆」
と、鳴いてとんでいってしまいました。

 おじいさんが垣根を見に行くと、蟹の甲羅(こうら)がたくさん落ちていました。
「こりゃひどい、婆さんのしわざか」

 おじいさんが甲羅をひろってみると、中に水がたまっています。ひとくち飲んでみると、水に見えたのはお酒でした。
 

 
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