白茄子
 
◆白茄子
 和尚さんは、檀家の人からもらったゆで卵を、小僧さんにかくれて食べようとしていました。

 そこへ小僧さんがやってきて
「おや、和尚さん、かわったものを食べていますね。なんというものですか?」
と、いいました。

 和尚さんはすました顔で
「うむ、これは白茄子というものだ。色はかわっておるが、味はふつうの茄子(なす)と同じだよ」
と、いいました。

 すると、お寺の鶏(にわとり)が「ホッケボーズ、コッケコーロー」と鳴くので、小僧さんはすかさず
「おや、白茄子の親が鳴いていますね」
と、いいました。

「ははは、こりゃ一本とられたわい」
 和尚さんは、小僧さんにもゆで卵をわけてやり、ふたりで仲よく食べましたとさ。

白茄子
 
↓和尚が卵をひとりじめにする類話
◆卵は饅頭(栃木県)
 和尚さんが「街へお使いにいって饅頭を買って来ておくれ」というので、小僧さんがいつもの店で「饅頭をください」というと、店の人は何か白いものをつつんで渡してくれる。よく見ると、それは饅頭ではなくて卵だった。さては和尚さん、自分だけ卵を食べているのだ」と思った小僧さんは、いつか仕返しをしてやろうと狙っていた。

 ある日、和尚さんが「明日は隣村へ行くから朝早く起きて馬の用意をしておきなさい」というので、小僧さんはチャンスだと思い、朝一番に和尚さんを起こしながら「和尚さん和尚さん、饅頭の父親が鳴いております」といった。一番鶏だから卵の父親というわけだ。和尚さんは不愉快になって「見たもの聞いたものをむやみに口に出すもんじゃない」ときつくしかりつけた。

 小僧さんは叱られたことを根に持って、どうにかして和尚さんを言い負かしたいと思った。和尚さんが馬で隣町へ行くお供をしていると、風がふいてきて和尚さんの帽子を飛ばした。小僧さんは今朝のことを思い出して何も言わずに黙っていた。和尚さんは怒って「なんで帽子を拾わないのだ。落ちたものは拾いなさい」ときつく叱った。そこで小僧さんは帽子をひろってくると、ちょうど馬が饅頭のような糞をしているところだったので、和尚さんの帽子で糞をつつんで「馬から饅頭が落ちたので拾いました」といって渡した。さすがの和尚さんも降参して小僧さんにあやまった。
 

 
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