菊娘 |
あるところに菊の花が大好きな、ひとり身の男がおったんだと。 ある日、男のところに美しい娘がやってきて、一晩とめてほしいと言った。 とめてやるのはいいが、うちには食べるものも満足にないからのうと、思案していると、 「ままならわたしが作りましょう。ちょっと目をつぶっていてくださいな」 と、娘は男に目をつぶらせて何かはじめたんだと。 ざらざらと米をとぐ音がして、ぱちぱち薪のはぜる音がして、そのうちいい匂いがしてくると、娘は目をあけてもいいと言ったんだと。
娘はそのまま男の嫁さまになって、毎日くるくるとよく働いた。
男は、自分が無理に風呂になんか入れようとしたからだと、ひどくがっかりして、ふと庭を見てみると、朝まできれいに咲いていた菊の花が、すっかりしおれて首をだらんとたらしていたんだって。
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