骨なし太郎
 
 
 骨なし太郎はうまれてから一度も立ってあるくことがありませんでした。まるで骨のないクラゲのように、ずっと寝てばかりいました。

 ある日、寝たきりだった骨なし太郎が立ちあがり、村の人たちにいいました。
「おら、いいこと思いついた。夜になったら松明(たいまつ)を両手に一本ずつもって集まってくれろ」

 村の人たちは、わけがわからないという顔をしながらも、太郎のいうとおり松明をもって集まりました。

「松明に火をつけてお城さいくだ」
 村の人たちは太郎のさしずでお城のまわりをぐるりとかこみました。
「ええか、村の衆。おらが合図したらさけぶだぞ。それ、さけべ!」
 太郎の合図で村人たちがいっせいにときの声をあげました。

 お城ではおおさわぎ。
「たいへんだ、城がとりかこまれているぞ」
「敵の奇襲だ。ものすごい数だぞ」
 村人みんなが両手で松明をもっているので、倍の人数に見えるのです。

 突然のことで、戦の準備もしていません。殿さまは、これでは勝ち目がないと思って、身近な家来だけをつれて、城をすててにげてしまいました。

 こうして、骨なし太郎はたたかわずにお城を手にいれて、殿さまになったということです。
 

 
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