三匹の猿がいました。
三匹そろって栗をひろいに行きましたが、どういうわけか一個しかみつかりませんでした。
「栗は一個しかないが、さて、どうするか」
「ここは、いちばん年長のものがとることにしてはどうかね」
「それがいい。だが、わしらのうち、誰がいちばん年が上なんじゃ」
そこで三匹は、自分が子供だったころのことを話すことにしました。
「わしがまだ子猿だったころ、琵琶湖は今ほどでかくはなくてのう、ふかさも茶碗の底くらいしかなかったよ」
すると、もう一匹がいいました。
「そりゃまた昔の話じゃのう。だが、わしの話にくらべればまだまだじゃ。わしが子猿だったころ、日本一の富士山は帽子みたいな高さで、わしゃ何度もまたいであそんだもんじゃ」
それを聞いて、三匹目の猿がしくしく泣きだしました。
「むかし、わしには二匹の子がおってのう。最初の子は富士山が帽子ほどの高さのときに病気で死んでしもうた。二番目の子は琵琶湖が茶碗の底ほどのふかさだったころに怪我をして死んでしまったのじゃよ」
それで三匹目がいちばん年上ということになって、栗を手にいれたということです。
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