炭焼長者
 
 
 ある国のお姫さまは、よい人のもとにお嫁にいけるよう、観音さまに二十一日の願をかけました。満願の夜、夢まくらに観音さまがあらわれて、西の山にひとり者の炭焼がいるから、その男のところへとつぎなさいとお告げがありました。

 お姫さまは、わずかなお供をつれて山へゆくと、お告げのとおり、若い男がたったひとりで炭焼をしてくらしていました。
「観音さまのお告げでここへまいりました。どうかあなたのお嫁さんにしてください」

 お姫さまがそういうと、男は笑いながら「あんたのような育ちのいい娘が山でくらせるわけがない」といってとりあいませんでした。

 お姫さまは、そんなことにはちっともかまわず、お供のものを帰してしまうと、炭焼の家にあがりこんで、掃除や洗濯をはじめました。

 そうして何日かくらしましたが、炭焼では男ひとりがやっと暮らしていけるお金にしかなりませんから、たちまち暮らしにこまるようになりました。

 そこでお姫さまは、お嫁入りのときにもってきた手箱の中から小判を一枚とりだして、
「これで町へいって、すきなものを買ってきてくださいな」
と言いました。

 ところが炭焼は、うまれてこのかた小判というものを使ったことがありません。炭を売ってもらえるのは青いさびの出た銅貨ばかりなので、そんなピカピカしたものでものが買えるわけがないといいました。

 お姫さまが「これは小判といって、とても価値のあるものなのですよ」と何度もくりかえし説明すると、炭焼はきゅうに神妙な顔をして言いました。
「それが本当なら、おら大金もちだ。それと同じものが裏山になんぼでもある」

 そうしてふたりで裏山を見に行くと、炭焼のいうとおり、あたり一面が小判でうめつくされていました。ふたりは小判をひろいあつめて幸せにくらしたということです。
 

 
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