団三郎の息子
 
 
 佐渡島は新潟県にある大きな島です。ここには団三郎という狸(たぬき)がいて、人を化かすというのでおそれられていました。

 あるお役人が道で狸とであいました。この人はなかなか肝のすわった人だったので、「ははー、こやつが人を化かすのだな」と、そこらにおちていた棒きれで狸をたたき殺そうとしましたが、狸は大けがをしながらも、にげていきました。

 その夜のことです。町にある外科のお医者さんのところに往診をたのみにくる者がありました。お医者さんがその人についてゆくと、二ツ岩のあたりに大きなお屋敷があり、この屋敷の若旦那が大けがをして苦しんでいるというのでした。

 お医者さんがけが人を見ると、何かでたたかれたようなあとがあり、あちこち骨がおれています。骨をついでやり、いたみのとまる薬をあたえて、薬がきれたらとりにくるようにいって、町にかえりました。

 ところが、何日たっても誰も薬をとりにきませんでした。お医者さんが薬をもってようすを見にいくと、どこをどうさがしても、あのときのお屋敷がみつかりません。

 そういえば、団三郎狸は二ツ岩のあたりを住みかにしていると聞きます。お医者さんが治療した狸は、お役人がたたき殺そうとした狸で、団三郎の息子だったのでした。
 

  
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