お月とお星
 
 
 あるところに、お月とお星という姉妹がありました。お月はお父さんのほんとうの子ですが、お星はお父さんの後妻がつれてきた子供でした。

 ふたりは血がつながっていませんでしたが、ほんとうの姉妹のようになかよくしていました。けれどお星の母親は、継子のお月をにくんでいました。

 ある日、継母は、夜になったらお月を包丁で殺してしまおうと、出刃包丁をといでいました。それを見た妹のお星は、
「お月ねえさん、今夜はおしゃべりでもしながら、わたしのふとんで休みましょう」
といって、お月を自分のふとんにねかせました。そして、お月のふとんにはスイカをいれておきました。

 娘たちがねしずまったころ、継母は足音をしのばせてお月のふとんに近づきました。ふとんがもりあがっているので、継母はお月がねているのだとおもいこんで、ふとんのうえから包丁でなんどもさしました。

 朝になると、お月が何ごともなかったようにおきてきたので、継母がふとんを見にいくと、包丁でさされ、中身がながれだしたスイカがころがっていました。

 こうして、お月は、お星のきてんですくわれましたが、そのことで継母は、お月をもっとにくむようになり、こんどは石の櫃にとじこめて、山にうめてしまおうと考えました。

 お星は、母親からその話をきいて、びっくりしました。けれど、お星には母親をとめられそうもありません。そこで、母親が石櫃をつくらせた石屋をたずねて、
「お母さんのつかいできました。石櫃のそこに、小さな穴をあけてくださいな」
と、いいました。そして、お月には、芥子(けし)の種をわたして、
「ねえさん、これをはだみはなさずもっていてください。いつかねえさんのやくにたつはずですから」
と、いいました。

 継母は、父親が仕事で家をあけるのをみはからって、お月を石櫃にとじこめました。そして、お星には「このことは誰にもいってはいけないよ」と、きつく口止めして、人をやとって石櫃を山にうめにいきました。

 お月は、石櫃のそこに、小さな穴があいているのに気がついて、妹がくれた芥子の種を、すこしずつ穴からおとしていきました。けれど、それがなんの役にたつというのでしょうか。継母たちは、お月のはいった櫃を山奥にうめて、さっさと帰ってしまいました。

 やがて冬がきて、春になると、お月がおとした芥子の種が芽をだして、うつくしい花をさかせました。お星は花をたどって姉がうめられている場所をさがしあてて、地面をほりかえしました。

 お星が石櫃をあけると、中にはお月が骨と皮ばかりになって、それでも生きていました。けれど、このまま家にかえれば、また母親がねえさんをひどいめにあわせるとおもって、ふたりはどこへともなく歩いてゆき、いつしか天にたどりついて、月と星になりました。

 それからしばらくして、父親がもどってくると、娘たちがいないのに気づきました。母親は、
「娘たちは遊びにいったっきり、もどってこないんですよ。狼にでもとられたのかもしれません」
といって、うそなきをしてみせました。

 それでも、父親はあきらめきれず、六部(ろくぶ)になって、鉦(かね)をたたいてお経をよみながら、あちこちたずねあるきました。そのうち、力つきて、鉦叩鳥になってしまったということです。
 

◆こぼれ話◆


 父親の化身である鉦叩鳥は、残念ながらなんの鳥のことかよくわからない。カネタタキという虫なら実在するが、何か関係があるのだろうか。
 

 
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