天狗の隠れ蓑 |
彦一さんというとんち自慢がいました。 ある日、彦一さんは竹の筒を目にあてて、 「むむっ、これはすごい。はるか天竺まで見えるぞ!」 と、ひとりごとをいっていました。 すると、天狗が飛んできて、
彦一さんは、ぶぜんとして
天狗が竹の筒をのぞいてみると、天竺どころか目の前のものさえ見えません。遠めがねというのはまっかなウソで、節さえぬいていない、ただの竹の棒でした。
彦一さんは、天狗のかくれ蓑をもって町へいきました。そば屋へはいっておいしいおそばをたらふく食べると、おかんじょうをしないで店をでました。店の人が、あわてておいかけてきましたが、彦一さんはかくれ蓑をきているので姿がみえません。 食いにげがうまくいったので、それからははたらきもせず、かくれ蓑をつかってお金をぬすんで気ままにくらしていました。
しかたなく、灰をひろいあつめて体にぬってみると、かくれ蓑のききめがまだのこっていて、体が見えなくなりました。
かくれ蓑の灰を体じゅうにぬりたくって姿をけした彦一さん。これから千両箱をぬすみだすと思うと、きゅうにふるえがきて、小便がでそうになりました。道ばたで立ち小便をすると、小便が足にかかって灰がとれてしまいました。けれど、彦一さんは気づきません。 そのまま長者さんの屋敷にいき、いつもの調子で表からどうどうと屋敷にあがりこみました。すると、廊下ですれちがったお女中さんが悲鳴をあげました。
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◆こぼれ話◆ 種子島では、遠眼鏡のかわりにザルが登場する。 ある男がザルをかぶって「天狗様、天狗様」と言いながら歩いていると、隠れ蓑を着た天狗が偶然通りがかった。自分の姿を見られたことを不思議がる天狗に、男は「これだけ目があれば何でも見える」と答える。 |
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