子供たちが遊んでいると、どこからか見なれない若いもんがあらわれて、
「こんなとこより面白いところがあるだで、連れてってやるべかなあ」
って言うんだって。
「面白いとこって、どんなとこだい」
「栗だの柿だの、いっぱいあるとこさ」
「なら連れてってけろ」
「おうともよ」
若者は尻からしっぽのようなものを出して、子供たちに乗るように言ったんだと。
子供たちが、若者のしっぽにまたがると、
「よくつかまってるだぞ」
と、言って、若者はびゅーんと空へ舞いあがった。
気がついてみると、山の中にいて、あたりには栗だの柿だのいっぱいなっていたんだってさ。
「待ってろ。おらが落としてやるからな」
若者はびゅーんと飛び上がって、木のえだをゆすってまわるから、栗やら柿やらが、ざらんざらんと落ちてくる。
夢中になって拾っているうちに、あたりがだんだん暗くなってきた。
「しまった、もうこんな時間か。おら、帰らねばなんね」
若者はそういって、子供たちを置いたまま、勝手に帰ってしまったんだと。
子供たちは、村にかえりたくとも道がわからない。
小さい子はわんわん泣きはじめるし、大きい子も心細くなって、どうしていいかわからなかったんだと。
それで、あてもなく山の中を歩いていると、大きなお屋敷にたどりついたんだと。
「おやおや、子供ばかり、こんなにたくさん。山奥でなにしとるだ」
屋敷から出てきたのは、やさしそうなお婆さんだったと。
「知らない兄いがしっぽに乗せて連れてきてくれただども、おらたちを置いてどっかいってしまっただ」
子供たちがそういって泣くので、お婆さんは
「また南風のやつだよ。あの子の気まぐれにはこまったもんじゃのう。みんな、心配せんでもいいよ。ここは風の親の家だから、わしが北風をおこして村まで送らせるからのう」
といって、北風をおこしにいった。
北風は、まだ木枯らしには早いと寝くたばっていたが、南風が悪さをしたと聞いて、しぶしぶおきてきた。
そして、尻からしっぽのようなものを出すと、子供たちをのっけてびゅーんと村までおくってやったんだと。
村では子供たちがかえってこないといって、村のもんが呼ばわって歩いていたが、無事に帰ってきたのを見ると、みんな喜んだ。
そこへ冷たい木枯らしが吹きぬけたので、
「そろそろ冬だなあ」
と、言ったんだと。
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