語り部屋珍獣の館山海経博物誌直前に見たページ

羊飼いと狼(イソップ寓話)

 あるところに、羊の番をする少年がいました。

 羊の番というのは責任の重い仕事ですが、一日中、羊を見ているだけなので、問題がおきないかぎり退屈な仕事です。

 ある日、少年は「ここに狼がきたら、みんな驚くだろうなあ」と思いました。そこで、村に聞こえるように「狼だ、狼がきたぞ!」と、大きな声で叫びました。

 村の人たちは、あわててかけつけてきて、狼はどこだと探しまわりました。けれど、狼なんかどこにもいません。

 少年は、その様子があんまり面白かったので、次の日も、その次の日も、いもしない狼が来たと大声で叫びました。

 何度かそんなことが続いたあとに、今度は本当に狼がやってきました。
「狼だ、狼が来たぞ!」

 少年は声のかぎり叫びましたが、村の人たちは思いました。この前も、その前も、狼なんかいやしなかった。どうせ今度も少年のうそに決まっている。

 そうして、誰も様子を見に行かなかったので、狼は羊をみんな食い殺してしまいました。嘘をつく者の言うことは誰も信じてはくれないのです。
 

 このお話は、とても有名なので、聞いたことのない人はいないと思います。『 ONE PIECE (ワンピース)』というアニメにデタラメばかり話すキャラがいますよね。彼の名前がウソップなのは、イソップ寓話の羊飼いと狼にちなんでいるのです。
 

 ところで、この話。むかし読んだ本では羊飼いの少年が狼に食い殺されることになってました。ところが、ちょっと調べてみると、イソップの原典では殺されるのはあくまで羊だけなんだそうです。考えてみれば、放牧地
には羊がたくさんいるはずですし、わざわざ少年を襲うとも思えません。いろんな人が子供用の読み物としてまとめなおしているうちに、罰が厳しくなってしまったのかもしれませんね。

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