くずし字は掲載に問題なさそうなお題を探すのがけっこう大変です。わたしが筆で書いたらどうしてももとと違ってしまうし、読みやすく書いちゃったら勉強にもならないし… 今回のはパブリックドメインのマーク付きでWikipediaにあった画像です。江戸時代のものなのでもともとの瓦版は著作権が生滅してるとは思うんですが、帝国大学図書館(今の東大?)のハンコおしてありますね。いいのかな。よくわかんないけど。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%83%93%E3%82%A8
これの右側の文章ですが、読めるでしょうか。解像度が低めなので文字と虫食い穴の見分けがつきにくい部分がありますが。全文の文字起こしは最後にやります。今回はわたしも一部読めない部分があるので、もし読める人がいたら教えていただけるとうれしいかも。
注目したい文字:出・年・間
くずし字に慣れてない人だったら「全部わからない!」かもしれないですが、いきなり全部やっても眠くなるだけなので、特徴的なとこだけ選んでいこうと思います。まずは最初の行の「光物出」の「出」です。
お題にした瓦版には、最初の行に左側の「お」みたいなのが出てきます。これは印象に残る文字なのに「お」にしか見えないので、なかなか覚えられない文字です。筆をはなさずに書くと真ん中の字のようになります。「ろ」を書いてから縦棒、最後に点。
なんでこの「ろ」をぶった切ったみたいなのが「出」かっていうと、左の図を見てください。こうやって書くと、なんとなく「出」っぽく見えませんか?
「出」のくずし字で重要なのは、縦棒があとだってことです。現在学校でおしえてる書き順だと、最初に縦棒を書きますよね。楷書(くずさない字)だったら縦棒から書かないと、うまくバランスがとれないのです。でもくずす時はこの通り、楷書の時とはまるで違う順番で書きます。
こういうのを知ってしまうと、細かい書き順にこだわるのは無意味だと感じるわけです。書き順は、あくまでバランスよく書くのに都合がいいように決めてあるだけなので、間違ったところできれいに書けてりゃそれでいいと思いませんか?
次に、「年」にも注目します。続けて出てくるので「間」も入った画像になってますけど。お題の画像だと3行目に出てきます。
「年」もすごいでしょ。ノから入っていきなり縦棒ですから。楷書でこんな書き方絶対しないけど、くずす時はこうなんです。
「手」に似てると思った人は目の付け所がいいですよ。「手」も最後のくねくねの回数が違うだけでほとんど同じくずし方をします。昔の人は、文字ひとつひとつでなく、前後の流れで判断してたんでしょうね。
最後は「間」です。これは「門がまえ」をどうくずすかの問題ですが、「间」こんな略し方なら今でもする人はいますよね(ちなみに簡体字中国語の「間」です。表示できなかったらごめん)。門がまえの部分を先に書いて、その下に中の文字を書くのでだんだん「ウかんむり」みたいになったと考えれば覚えやすいかと思います。
文字起こし
最初に書きましたが、今回はわたしも一部読めないところがあるので、読めなかった文字は “・” に、読み方があやしい部分は ( )でくくりました。
肥後国海中に毎夜光物出ル所之役人行
見るニづの如く・(視)ス私は海中ニ住アマビヱト申
者也当年より六ヶ年之間・国豊作也・
病流行(早く)(私ン)写し人々ニ見・・・と
申て海中へ入けり右写し役人より江戸に
申来ル写也
弘化三年四月中旬
みなさんどのくらい読めたでしょうか。正直言うと、わたしはくずし字解読歴実質3ヶ月くらい(えっ!!)なので、読めない部分がけっこうあります。わたしが読めてないところをスルッと読めちゃうつわものの方、弟子にしてくださいおねがいします(うるさいくらい聞きに行くと思いますけどそれでもよろしければw)。
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