蔟からはずしたお蚕の繭(品種は琉球多蚕繭)。ふわふわした綿のようなものにくるまれているのがわかるでしょうか。これを「けば」といいます。
前回は、トイレットペーパーの芯を蔟にすると簡単だって書きましたが、芯がない場合は厚紙で三角柱を作って、同じように使ってもOKです。筒にするよりこの方が簡単。お蚕は、こっちの壁と壁の間に糸をはりめぐらせて、その糸の中に繭を作ります。最初にはった糸が「けば」になるというわけ。
このけばは、糸にするとき邪魔になるので剥いてしまうんですが、その話はあとでにします。まずは繭の保存方法を書いておかないといけません。
繭の中には生きた蛹がいます。ほっとくと、1週間くらいで蛾になって、繭をくいやぶって外に出てきます。そうなると、繭がだめになってしまうので(そういう繭から糸をとる方法がなくもないのですが、いわゆる「生糸」にはならない)、中の蛹を殺してしまわないといけないんです。
ここまでかわいいかわいいって言いながら育てるのに、ここでいきなり殺してしまうんですから、鬼か外道かってところですけど、これも家畜(虫なので家虫か?)の定めです。良い糸になるために育てられ、役割を果たすために死んで行くのがお蚕の宿命です。
養蚕農家だと、なんらかの方法で熱をかけて蛹を殺すのですが、数が少ない場合は冷凍庫に入れるのが簡単です。冷蔵庫ではなくて、冷凍庫、氷ができるほうの部屋に入れてください。そのくらい低温でないと蛹は死にません。蛹をきちんと殺しておけば、繭は何ヶ月も何年も保存できます(ただ、年数がたつと糸が弱って引きにくくなるような気がします。気のせいかな?)。
琉球多蚕繭は、全体に薄くてペラペラした繭なんですが、天と地が特に薄くて穴があいてるものも多いです。
左が琉球多蚕繭、真ん中が小石丸、右は雑種なので品種名はなくて、わりと普通の繭のサンプルとして置いてみました(これだけ けば をとってあります)。お蚕は品種によって繭の色や形がけっこう違います。とれる糸の長さも品種によりさまざまです。
交尾させたいので、いくつかの繭をあけてみました。蛹のオスメスを判定して、いくつか生きたまま残しておきます。蛹は繭から出してもちゃんと生きていて、時間がたてば蛾になります。
残りは冷凍庫に入れときます。小石丸もすっかり繭になったので、オスメスを選んで残したりしないといけません。全部かたづいたら糸にしようと思います。
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