今回の旅で見たかったもののひとつに、切り紙の神社があります。
http://www.chinjuh.mydns.jp/wp/20150708p2287
↑この記事に少し書きましたが、東北の、たぶん宮城県と岩手県にまたがる地域には、切り紙のお飾りを神棚などにあげて豊漁や五穀豊穣を祈願する風習があるらしいんです。そういうものを、前に博物館で見たことがあって興味を持っていました。
今回は、まず登米市の「まめからさん」と呼ばれている稲荷神社に行ってみることにしました。石巻市内から三陸自動車道の無料区間を使って、車で40分くらいかなあ。わたしたちは車で行ったのですが、JR陸前豊里駅から1kmくらいのところみたいなので青春18きっぷの旅などでも立ち寄れそうです。
▲ここが「まめからさん」と呼ばれる稲荷神社であってます??? いやほら、本などは「ナントカ市の○○神社」みたいにしか書かれてないことが多くて、正確な場所って実はよくわからないんですよね。同じ名前の神社が複数ある場合もあるし(汗)
あいにくの雨降りなのと、お祭りでもなんでもない日にふらりと参拝に来てしまったので閑散としていますが、なかなか立派な神社です。境内に奉納相撲やお神楽かなにかを舞う場所があります。
果たしてここが切り紙の神社なのでしょうか。あたりをきょろきょろしてみましたが、しめ縄に下がっている紙垂(しで)はごく普通の形状です。お参りをしてから、ガラス越しに拝殿をのぞいてみたら、おっ、ありますよ。ありましたよ! 確かに紙を切って作ったお飾りが、拝殿の片隅に飾られていました。
近くで見たかったのですが、あたりに人の気配もないし、なんの連絡もせずふらりと立ち寄っただけなので、それはあきらめました。撮影の許可もとってないので写真もまずいでしょうね(たぶん)。
よし、じゃあ似たようなものを作っちゃおう。遠目に見ただけなので、あくまでイメージですけど、こういう感じのものでした。 これを、どういう時に作るのか(酉の市とか、お正月とか、お稲荷さんだから初午とか……?)、飾るのは神社だけなのか、氏子さんたちの家にも飾るとしたら、どういうふうに頒布(はんぷ)しているのか(ある時期に行けば誰でも買えるのか、お願いしておかないといただけないものなのか……)など、いろいろ気になります。こういう土着の風習は、本や博物館には「そういうものがある」としか紹介されてないことが多くて、具体的にどうしてるのかっていう話がどうも伝わってこないんですよ。おそらく伝承してる人たちにとってはあたりまえすぎることなので、聞かれなきゃ説明もしないんだと思います。
みなさん、ご自分でブログなどやるときはですね、自分ではごくごく当たり前でフツーのことだと思ってることを、しつこく詳細に書くといいですよ?「これは我が家ローカルだから」とかいうことでも、自分の家のこととして記録しておくべきです。何十年もたってから見直すと、書いておいてよかったって思う日が来るかもしれないので。
というわけで、切り紙の神社その1「まめからさん」にはお参りできました。この時点で16時くらい。まだ時間的には早いのですが、かといって博物館のような場所はもうすぐしまっちゃう時刻です。
そういえば、登米市には「油麩丼」という地元グルメがあるって聞いたことがあります。というか、以前はてな人力検索で「東北のここいらへんで食べられる郷土料理みたいなものはありませんか(内容はうろおぼえ)」みたいな質問をした時に、油麩丼っていうのがあるらしいよと教えてもらったんですよね。よし、今こそそれを食べに行く時だ!
油麩というのは、宮城県で食べられてるお麩です。関東あたりで一般に知られているお麩は、小麦粉のグルテンを焼いて作る焼麩ですよね。油麩は揚げて作るそうです。昔からあるものだそうですが、それを30年ほど前に、登米市のある旅館で卵とじにして丼物にしたのがヒットして、郷土食みたいになってるらしいです。
◎油麩丼の会(公式)
http://www.aburafudon.com/
こんな公式サイトまであります。一般のご家庭に浸透してるかどうかはちょっとわかりませんが、サイトを見る限り町おこしを頑張ってる感じがします。
場所的には、平成の大合併前に登米町(とよままち)と呼ばれてたところのようです。まめからさん(稲荷神社)からは11kmくらい離れていますが、車なのでどうってことありません。行ってみることにしました。
到着したのが16時半くらい。あら、ここいらへん、古い町並みが残ってていい感じ。雨がふってたので写真をとらなかったんですけど、古い土蔵や旧家がたくさん残っているし、町中いたるところに資料館があるみたい。警察資料館、県庁資料館、歴史民俗資料館……その他もろもろ。もう閉まる時間なのでこの日は見られませんでした。ちょっと面白そう。でも駅から遠いんですよねここ。路線バスか何かで来られそうなら、そのうち青春18きっぷの季節に来てみようかな。
それはともかく、問題の油麩丼です。車で町をひとまわりしてみると、油麩丼の幟(のぼり)をたてた店が何軒かありました。しかし、どこも閉まってる。閉まってるだけじゃなくて、いつやるのか、お休みが何曜日なのか、書いてない店ばっかり。う、ううむ。
夜からの営業なら、17時過ぎたら開くかもしれないので、少し待ってからもう一度まわってみましたが、ほとんどの店は開く様子がなかったです。観光客相手に昼だけやっている感じなんでしょうか……?
居酒屋とおぼしき店に人がいたので聞いてみたら、今日は休みなのでやらないとのこと。
牛タン屋さんらしき店が開いたので近づいてみたら「油麩丼は品切れ中」と張り紙があり、その張り紙自体が古くなっていて、出さなくなってからだいぶたってる感じ。
旅館に併設された小料理屋さんは、もともと宿泊する人のために作ってるし、今日はやってないとのこと。席も少ないので飛び込みでこられても座れないかもしれない、というような話でした。
う、ううむ……いや、多くは語るまい。これ以上何も聞いてくれるな(笑)そういえば公式サイトのマップにも、営業時間はひとっつもまったくこれっぽっちも書かれておらず、電話してから行けって書いてあるしね。土日祝日のお昼時に来たらまた違うんだと思います。
そういうわけで、油麩丼は食べられませんでした。油麩そのものを作って売ってる店が開いていたので、いくらくらいするのか見たら、想像より安かったので買うことにしました。
▲熊本あぶら麩店:白いバンが止まってるのがその店です。
▲購入した油麩。フランスパンみたいなものが4本入って730円でした。(値段を書き間違えていたので修正。×630→○730)
730円は高いと思うかもしれませんが、東京で油麩(=仙台麩)を買うと、この半分の長さのものが2本入って250円くらいしますよ。4倍入ってこの値段なら激安と言えるでしょう。
油麩は、製造するお店によって揚げ油などが違ってるそうです。このお店の油麩は、東京で買える仙台麩に比べると香りが濃厚で、ゴマ油かなにかを使ってるのかなあ、という感じです。
上品の郷という道の駅に寄り道して、石巻にもどりました。この日は一日中雨でした。
【おまけ】油麩を料理してみました
▲フランスパンではなく油麩です。固そうに見えますが、包丁で簡単に切れます。
▲鍋に出汁を入れ、醤油・みりんなどで味付けして、タマネギとインゲンを放り込んで少し煮てから、油麩を投入。油麩は戻さずにつかってみましたが、汁をよく吸ってすぐやわらかくなりました。なお、写真は2人前くらい。親子丼鍋を持ってないので、丼でなく皿盛りにする予定。
▲最後にときたまごをかけまわして、蓋をして蒸らせばできあがり。
▲皿に盛りました。味付けは面倒だったらめんつゆを使うといいかもね。
【楽天市場で買うなら】
ささきの手焼 油麩 4本入り |
***店舗内組み合わせ自由で同一梱包可能12kまで同一料金***(但しクール便扱い除く) … |
熊本あぶら麩店のがあればよかったんですが、なかったので別のメーカーのを貼ってみました。各メーカーのを食べ比べてみるのも楽しそう。
【関連記事】
◎お麩ばっかり勢揃い
http://www.chinjuh.mydns.jp/cgi-bin/blog_wdp/diary.cgi?no=1441
◎またまたお麩勢揃い
http://www.chinjuh.mydns.jp/cgi-bin/blog_wdp/diary.cgi?no=1489
◎愛知のたま麩
http://www.chinjuh.mydns.jp/wp/20150326p1532
宮崎県の高千穂神楽で、徹夜で神楽やるときに、鴨居から下げた切り紙でぐるりと取り巻くやうな感じだつたと思ふ。あと、中国だと、赤い切り紙ですよね。
http://www.pmiyazaki.com/takachiho/kagura.htm
あ、ほんとだ!!
そうそう、この鴨居からさがってる切り紙みたいなのを宮城県や岩手県あたりの神社でも作るらしいんですよ。
こういう、描くタイプの切り紙を主にやるところと、七夕飾りみたいな網を切るところと、両方飾るところがあるみたい。
そういえば縁起物の切り紙は中国にありますね。描くタイプのものは中国との関連も気になりますね。
満洲族(女真族)のシャーマニズムの切り紙が、日本の民俗との親縁性といふ意味で、要注意だと思ひます。
女真族!!
単純に紙細工として興味があって注目してたらどんどん深い方向に!
ピンバック: 東北旅行2015夏:こんなルートで回りました | 超・珍獣様のいろいろ
ピンバック: 東北旅行2015夏:南三陸町の神社とさんさん商店街 | 超・珍獣様のいろいろ
あと、とつくにご存知だらうけど、神道イザナキ流の切り紙てのが、怖くて、いい感じだよね。中国で、「人日」といふ日に、白紙でヒト型の切り紙を作る習慣が、昔あつたみたいだけど、これなんか、わが国の陰陽道に呼応してさう。七夕に笹を立て、流す風習はシナには無いわけだけど、ヒト型に厄を依りつかせて流す発想は、似たものがありさうで、七夕の笹の短冊やら、紙のチェーンやら、その他風流(ふうりゆうでなく、ふりゆうと発音)といふ飾り物や、削り花など、いつの日か、一網打尽に謎を解いて見たいです。
いざなぎ流の切り紙って御幣につける紙垂を人やら狐やらの形に切るアレですよね。それも東北の神社で作るところがあるはずです。あとで本を見ときます。
人日って一月七日でしたっけ? 日本だと長野や山梨で七月七日の七夕様に人型の紙を切るとこがあるそうですよ。七夕人形で検索するといくつかの例が見られるはず。
確かにここらへん、全部繋がってそうな気がしますね。御幣と削り花の関係はよく言われることなので、日本と中国だけでなく、ミクロネシアの島々なんかもひっくるめて、大きな繋がりのひとつなのかも。
いざなぎ流みたいな怪しい感じの切り紙だと
宮城県栗原市の御賀八幡宮(おんがはちまんぐう)っていうところのが良い感じっぽいれし¥
式王子みたいな人型の切り紙を飾るらしいです。
あとで作ってみよっと。なんだかドキドキするなあ。