おはしょりを作らない対丈(ついたけ)の着物です。足首が隠れるくらいの丈にするつもりだったんですが、衿の繰り越しが予想以上に必要だったので結果的に丈が短くなってしまいました。
こんな感じで後ろ身ごろを広く、前身ごろを狭く作ってあります。人間だとこんなバランスの着物は前がはだけるかもしれませんが、リカちゃんは動かないのでまあいいかなあと。
後ろはこうなってます。後ろの衿ぐりを大きく背中側に引っ張ってあります。こういうのを「繰り越し」といって人間の着物にもあるんですが、人間の場合はこんなに沢山繰り越すと、衿が抜けるのを通り越して背中が見えそうな気がします。
せっかくだから、着物の繰り越しの作り方プチ講座です。
この紙を着物の身頃(みごろ、胴体を包む部分)だと思ってください。丁度半分に折ったところに首を通すための切れ目(衿肩あき)を入れます。
人間の体は立体なので、このまま衿をつけると着づらいです。洋服でも衿ぐりは前だけでなく背中側にもちょっぴりありますよね。それと同じように、着物も衿肩あきが少しだけ背中側にあったほうが着やすいんです。
で、どうするかっていうと、
後ろ身頃をこんな感じに折って縫ってしまいます。これを繰り越し揚げとか言います。
繰り越し揚げを作ると、当然のことですが後ろ身頃が短くなります。
そこで、裾(すそ)をそろえて折り直すと…
この通り、衿肩あき(首を通すところ)が後ろ身頃側にひっぱられてくるという仕組みです。
こんな面倒なことしなくても最初から後ろ身頃側に衿方あきを作ればいいじゃんと思うでしょう。そうです、そういうふうに仕立ててある着物もあるので、それだってかまわないんです。
ただ、繰り越しって人によって好みがあって、多めにとって衿を後ろに抜いて着る人もいるし、少なめにして衿を首に添わせて着る人がいます。繰り越し揚げ方式ならば好みにあわせて縫い直すことができるので、古着を捨てなかった時代にはこれが合理的だったというわけ。この理屈を知った時にはパズルが解けた時みたいな快感を覚えたものです。
こうやって作った身頃に、袖と衿をつければ着物になります。人間のもおおむねこういう構造になってます(前身ごろを広くするために「おくみ」というものを縫い足したり、裾がやや狭くなるように縫ったりしますが、まあその程度)。
リカちゃんの体形は、胸板が極端に厚く(巨乳ではない)、下半身が貧弱です。この体形に身頃を沿わせてみたら、衿肩あきを後ろにぐいっと引っ張らないといい感じにならなかったので、最初考えてたのより繰り越し揚げを多めにとりました。そしたら丈が短くなっちゃったというわけ。まあ、布がカジュアルなのでこういうのも田舎娘みたいでいいかなと妥協。
立たせてみました。着物の下は嘘つき衿にしてあります(襦袢を着せてるんじゃなくて衿だけ固定してあるってこと。人間の着物グッズにもあります)。
ちなみに、この布は日暮里の繊維街で1m100円で買った洋服地です。わたしが夏に自分用に縫った着物の余りなので、リカちゃんとおそろいです。あ、しまった、昨日ならその着物を着てたので、リカちゃんを膝にのっけてるところでも写しておけばよかったかもね。
自分の着物も対丈で仕立てました。対丈は簡単に着られていいです。ただ、わたしは出っ腹なので、実はおはしょりを作ったほうが体に添わせやすく、なおかつ体形を隠すような気はするんですが(笑)
そういえば前に、リカちゃん人形を持ってるなんて意外だって言われたことがあるんですが、リカちゃんを作ってるタカラトミーは地元葛飾区の企業だったりするので、地元の名物のひとつやふたつ、持ってたって不思議なことはない…
…というのはもっともらしい話ですが、このリカちゃんは福島県の小野新町にあるリカちゃんキャッスルを見に行った記念に買ったものです。地元あんまり関係ない。
http://www.chinjuh.mydns.jp/cgi-bin/blog_wdp/diary.cgi?no=1315
リカちゃんキャッスルの訪問記はこのへんから読めます。