千葉県内のとある美術館に最近よく行くようになった。それほど大きくはないけれど、建物自体が美術品みたいになってていちいちセンスがいい。
たとえば富士山の絵ばかり並べてある部屋には美術館には珍しく窓がある。隣の絵と同じくらいのサイズの窓で、絵を見ながら歩いてくると、その窓から見える風景まで絵に見えたりする。
そうかと思えば、ただの絵が風景に見えるおかしな部屋がある。壁全面がガラスで、両脇に白い円柱を並べてあるから、まるでアルハンブラ宮殿かなにかの回廊みたいに見える。その部屋の一番奥の壁に一枚だけ風景画がかけてある。部屋の入り口から中を見ると、見えてるのは確かに絵なのに、まるで異世界に続く窓みたいに見えるのだ。
そんな建物の片隅に、人が3〜4人立ったら一杯になる感じの狭い空間がある。絵が飾ってあるわけじゃないし、なんのための空間なのかよくわからない。見上げると天井が高くて、なぜか大きな満月の写真が貼ってある。満月の写真というより、天体写真と言ったほうがピンとくるような写真だ。
ラフすぎる上にうろ覚えすぎる絵で申し訳ない。この絵よりもうちょっと広いけど、こんな感じの縦に長い部屋になってる。# 広さ感が出るように書きなおしてみたけど、やっぱりラフすぎてうろ覚えすぎてダメだこりゃ(笑)
天井を見上げていたら、月がおかしいのに気がついた。「海」の位置が違うのである。月の海は、ウサギの餅つきに見立てる、あの黒い模様のことだ。
天井に貼られてた月はこれ↑。この写真はNASAの公式サイトにあるものです(NASAの天体写真は著作権フリーのはず)。月の天体写真をいくつか見たら、これだとすぐわかった。たぶん有名な写真なので、見ただけでどういう写真なのか気づく天文ファンがいるかもしれない。
こっち↑は、わたしが地球から写した月の写真。こうして並べてみれば海の位置がぜんぜん違うのがわかるはず。月は、自転周期と公転周期が同期していて、いつも同じ顔を地球に向けている。ひとつ上の写真みたいなやつは地球からは写せない。
美術館の人に「あの月は普通の写真じゃないですね。わざとですか?」と聞いてみた。館の人によると、建物は著名な建築家の先生がデザインしたものだけど、月の写真については何も聞いていないということだった。近々イベントがあって、先生と話すチャンスがあるかもしれないので聞いてはみるけれど「あまり考えずに選んでるかもしれませんねぇ」とも言っていた。
最近また出かけてみたら、館の人が覚えていてくれた。残念ながらイベントで先生と話すチャンスはなかったそうだけれど、先生が書いたものを調べると、NASAの見学に行くなど宇宙に興味がありそうなので「断言はできないけれど、意図してあの写真を選んだかもしれません」と教えてくれた。
月面写真ならもっと鮮明なのがいくらでもあるから、たぶん選んでると思う。館の人に説明してないのもわざとだろう。言えば来館者が気づく前にガイドされちゃうかもしれないし、その先生にとっては関係者が最初の来館者なので、誰が気づくかほくそ笑みながら見ていたのかも。結局誰も気づかなかったみたいだけど。
先生の意図を勝手に尊重して、どの美術館なのかは書かずにおこうと思う。行ったことがある人なら、この記事の情報だけでどこかわかると思うし、これから行く人なら知らないほうがいいと思うから。
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