現在使われている「か」という文字は、「加」という漢字をくずしたものだけど、江戸時代までは同じ発音の仮名が複数あって、気分でテキトーに使っていたみたい。良く使われるのが「可」をくずした文字である。
▲花札の赤短に書いてある「あかよろし」の「か」は「可」の字をくずしたもの。決して「の」ではない。
ほんとうに気分で、書きやすいように書いているのであって、使い分けの決まりはないと思う。なんせ同じ単語でも別のところでは違う仮名で書かれてることがあるくらいなので、次の文字との繋がりとか、書く人の癖とか好きな筆運びとかで、いい具合になるように自由にチョイスされてたんじゃあるまいか。
次の文字とのつながりっていうのはけっこう重要だと思う。加は右から左へ筆を運び、江戸時代は縦書きなので、さらに下へ筆が移動するので、ぶっちゃけ面倒くさいんだと思う。そこへ行くと可はほとんど一筆で上から下へ繋がるので簡単だったに違いない。
しかし「可」はくせものだ。とにかくいろんなものに似すぎている。書く人の癖にもよるけど「ら」や「う」にそっくりだし「り」とほとんどおんなじだ。
「ら」は「良」をくずしたもので、「う」は「宇」をくずしたもの。もとの漢字はぜんぜん違うのに、くずすとほとんど同じになっちゃうんだよー。今思い付いたので画像は用意してないけど「ち」や「ろ」にも似てる。か・ら・う・ち・ろ… いろは四十八文字中、五文字も同じじゃないか。「あかよろし」の例から考えると「の」にも似てるし、これで六文字同じになった。フザケンナこら、責任者を呼べ!!!
▲「り」は「利」をくずしたものだけど、書き方によっては「わ(和)」とそっくり。「り」は書き方によって「の(乃)」にも似てる。ってか同じ文字なのにくずし方で全然別の形になっちゃうのとかほわいじゃぱにーすぴーぽーだよ。
最初に書いたとおり、同じ発音の仮名が複数あるので、さすがにこれじゃ意味がわからんとなれば、同じ発音の別の書き方をするんだと思うけど、江戸時代の町人たちは、よくこんなの読みこなしてたなあと関心するやらあきれるやら。
▲「われわれはうちうじんだ」…しまった、例文に肝心の「可」が入ってない!
最後の「さ」の横棒がないみたいな文字は「多」をくずしにくずしまくって最後に到達するくずしの極地。この字も曲者である。だって「可」の裏返しなんですよ?
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