まず、訂正。完全にごっちゃにしてたけど、『霊幻道士』と『幽幻道士』という映画が両方とも存在していて、下に貼ってある本はテンテンちゃんが出てくる映画の百科なので『幽幻道士』のほうですね。わたしが見た御札の蓮華が出てくるのも『幽幻』のほうだと思うのですが、当時どっちもテレビ放映で見てると思うので、だんだん自信がなくなってきました。違ってたらごめんなさい。
ええと、そもそも『幽幻道士』『霊幻道士』という映画はなんなのかっていうと、チャイニーズゾンビのキョンシーを世界に知らしめた映画ですね。キョンシーは埋葬されても死体が腐らず、墓場を抜け出して暴れる妖怪のことです。中国では本気で恐れられてたらしいんですが、両手をつきだしてぴょんぴょん跳ねる仕草を見て、日本ではむしろかわいいって人気でした。ドラゴンボールに出てくるチャオズは映画に出てくるベビーキョンシーがモデルです。その生ける屍たちを操ったり、鎮めたりするのに、道士が御札を使って大活躍。オカルトと香港アクションが入り交じって、そうとう面白い映画でした。
映画の内容はDVDでも借りて見てもらうとして、ここで注目したいのは折り紙です。映画の何作目か忘れちゃったけど、祭壇に呪符で作った蓮華(れんげ)が置いてあるんです。映ってたのは一瞬だったような気もするけど、それがもう、ずーっと忘れられない。
▲実業之日本社『ヤングセレクション キョンシー大百科4』昭和63年(1988年)発行
昭和63年って何年前だ? 28年前… 当時は子供向けにこういう「大百科」本が各社から沢山出てました。人気映画や人気アイドルの秘密なんかが網羅されてて面白いんです。この本は買ったんじゃなくて、図書館のリサイクルコーナーでずいぶん前に拾ったんですけどね。
映画では、道士がこの蓮華から呪符をピッと抜き取って法術を使っていたような気がします。これを折ってみたくて仕方なかったんですけど、当時は「ピッと抜き取る」ところまで出来ると思っていたので、花弁一枚ずつが独立していて、引っ張ると簡単に抜ける形状を考えていて、具体的な作り方をさっぱり思い付かなかったのです。
あれからだいぶ時間がたちました(28年とかネタが熟成しすぎ)。ある時、海外の折り紙作品を眺めていたら、まさに霊験道士の蓮華と同じものがあるじゃないですか。作り方はきわめて簡単でした。御札のような長い紙を折って束ねて、真ん中でしばり、一枚ずつめくって花弁にするだけ。
そこを手がかりにあちこち見てまわったら、やはり中国・台湾では、縁起物として御札の蓮華を飾るらしく、折り方もさまざまあるらしいです。なかでも蓮華は好まれているようで、本当に御札の紙で折ってる動画が沢山みつかりました。なるほど、ピッと抜き取るところはフィクションなんだ… そこに気づいてたら考える必要もないくらい簡単だったのになあ。
というわけで、わたしも折ってみます。
▲花弁のパーツはこんなです。折り方はとても単純。写真は正方形の紙を半分に切って使っています。キョンシーの額に貼るような細長い御札だと作りにくいです(作れなくはないが、蓮華ではなく菊みたいになってしまうかも)。中国の御札は形が様々で、正方形のがあったりします。
▲正方形から折る場合なら、最初に真ん中にむかって折り寄せて(この時点で正方形を半分に切ったのと同じサイズになる)、あとは長方形から折るのと同じです。これだと厚みが出てしまうので、薄い紙を使わないと折りにくいです。
▲花弁パーツを沢山作ったところ。数に決まりはないと思うけど、12枚か16枚がいいと思います。今回は16枚作ってみました。これを、4枚ずつ重ね、4つの束を作ります。
▲4束まとめて真ん中でしばります。写真ではタコ糸を使ってますが、輪ゴムでもいいですよ。
▲よく開きます。色が変わってるのはひっくり返したから。折り目が山になってるほうを上にしてください。
▲1枚ずつめくりあげる。折り目が山になってるほうを上にしないとめくれないので注意。あとは順にめくっていくだけです。
▲めくりかたは好き好きでしょうが、十字に4枚めくり、X字に4枚めくる…と繰り返すとハスの花っぽいです。
▲全部めくりあげました。簡単なものだけにちょっとした表情で味が出ます。
次に台座ですが、これは正方形の紙を使います。
▲正方形の紙を半分に折って、沢山重ねてまんなかを糸でしばります。枚数は、何度かやってみたところ、30枚は必要でした。
▲くくった紙の束を本に見立てて、最初のページで下の角を上に折って三角にします。ページをめくり、次は上の角を下に折って逆の三角を作ります。これを繰りかえして全部やります。この時、折り目はきちんと「つけないこと」です。ちゃんと折ってしまうと30枚使っても円になりません。
この御札の蓮華ですが、いろんな人の作品を検索して見ていたら、youtubeでちょっと有名な森正さんという折り紙作家の創作だと紹介している人がいて、確かに森さんの動画にも同じものがあるみたいです。でも森さんはまだお若い方のようなので、28年前に存在している折り方の考案者ってことはなさそうです。たぶん中国の伝承作品として紹介してるだけじゃないのかな。
まあとにかく、こういう情報は蓄積されてこそのものですから、80年代のキョンシー映画に出てくるっていう情報を付け加えて垂れ流しておきます。
寿紙(ことぶきがみ) |