お蚕は、掃き立て(孵化)から一ヶ月くらいで繭になります。つまり、うちのお蚕たちも、もうそろそろ繭になってもいい頃なのですが…
さっぱり繭になる気配なし。繭になる前に、お蚕は体がすこしちぢんで、色も透けてきます。そうなると餌も食べなくなります。しかし、うちのお蚕様(おこさま)たちは今日も元気に桑を食べているのでした。品種は春嶺鐘月という、春蚕用に普及した品種らしいですよ。 この品種はたぶん初めて飼うんですが(最初の頃はあまり品種を重視せず手に入るものを育ててたのでよく覚えていない)、やけに桑を食べます。こんなに食べるなら、もう少し間引いておけばよかったです。これじゃ、桑がたりないせいで体が変化しないのか、単純にこういう品種なのかよくわかりません。見た感じ、健康そうで、なんの問題もなく育っているようには見えます。数を数えたら240頭ほどいました。
わたしはどうせ育てるなら変わったのを育てたい、などと言いながら、去年は小石丸と琉球多蚕繭をやりました。どちらも古い固定品種です。あまり丈夫ではなく、毛蚕のうちにかなりの数が死んだりしますが、餌は少なめですみました。その分繭が薄いので、糸は少ししかとれません。
今年のお蚕は産業的に普及した品種なので、きっと大きくて分厚い繭を作るのでしょう。それだけに大量の桑を食べるんだと思います。思いますが、そろそろ繭になってくれ、たのむ。餌がない(笑)
桑を食べているところを動画にしてみました。ついさっき撮影。
240頭のお蚕が一夜で製造した糞と食べ残しの桑(ほとんど葉脈ばかり)。あくまで一夜分であって、一日分だと山また山ですよ。ちなみに、傍らにあるのは wii リモコン&ヌンチャクです。手が届くところにあったもので比較対象物に入れてみました(笑)
五齢蚕はとにかく食べて、とにかく糞をします。糞なんて汚いじゃないかと思うかもしれませんが、悪臭はまったくせず、ほのかに草の香りがするだけです。この糞をよく乾燥させたものは蚕砂(さんしゃ)といって漢方薬の材料になります。成分はビタミンAとB、葉緑素、その他もろもろだそうです。
ウソだと思うのなら「蚕砂」で検索してみるといいです。まっとうな漢方薬局の通販ページが複数ヒットしますよ。しかもたった500gで何千円もするんだから笑ってしまいます。良質の薬にするためには良い環境で育てた桑を与えて、良い糞をさせなくてはいけません。道端の桑で育てたお蚕の糞には、そんな価値はないと思います(笑)
漢方薬というのは、複数の生薬(植物や生物、鉱物の場合もあります)を混ぜて作るのですが、蚕砂単独でも、お茶として飲むことができます。お湯を注ぐだけですけどね。味は、苦味も渋味もなく、桑の香りがします。美味しいかっていうと、不味くはないけどね、という感じ。普段味のついたものを飲み慣れているわたしたちには、物足りない味だと思います。ブレンドされていない桑の葉茶にくらべると、桑臭さが薄くてかえって飲みやすいかもしれないです(味の感想には個人差がありますw)。
うちでも乾かしてお茶にすることはあるのですが、とても飲み切るような量ではないので普段は捨てています。
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