うちのお蚕さんたちも、一昨日の夕方から上蔟しています。たぶん農家だと、ある程度の数が熟蚕(じゅくさん、または、じゅくこ)になったところで餌やりをやめて、一気に上蔟させるんだと思いますが、わたしはせいぜい数百頭しか飼わないので、目で見て熟蚕になったものから蔟にたけています。熟蚕(伊勢崎あたりでは「ずぅ」と呼んでた)がどういうものかは、前の記事を読んでみてください。
最初に上蔟したお蚕は、すっかり繭になりました。糸をはきはじめてから一日半くらい。中ではまだ糸を吐いてるかもしれません。だいたい三日は吐きつづけるらしいです。そのあと中で脱皮して蛹になります。
以下は、一般の家で楽しみで飼う時に使えそうな簇のアイデアです。あくまで趣味のものであって、農家で使ってるのはこういうものではありません。
▲トイレットペーパー芯簇その1:ペーパーの芯を半分の長さに切って、ティッシュの空き箱に差し込んだだけ。写真のものは観察・観賞しやすいようティッシュ箱の底を抜いてあるが、抜かなくても問題はない。熟頭を一頭ずつ芯の中にいれてやるが、だいたい出てきて歩き回ってしまう。ほうっておけばそのうち気に入った場所で繭を作るが、時々おっこちて歩いて行っちゃうヤツがいるので、たまに様子を見る必要がある。
▲トイレットペーパー芯簇その2:適当な箱にペーパー芯を縦に突っ込んだだけ。ここに熟蚕を一頭ずつ放り込む。出てきて歩いて行っちゃうやつも当然いるので、それを防ぎたい場合は、上に一枚紙をのっけておく(下の写真のような状態)。
お蚕は自分のまわりに二面または三面壁があれば繭を作るけれど、居心地がいいのは狭い個室らしい。お蚕には良さそうだけど中が見えないので観察・観賞には不向き。
▲トイレットペーパー芯簇その3:転がらないように三角につぶして置くだけ。
▲ペットボトル簇:四方八方から見えるので観察には適している。なるべく凸凹の少ないボトルを使えば見やすい。底にたまっている液体は糸を吐き始めたお蚕がする水を含んだ糞。
▲ペットボトルはよく洗って乾かしておき、側面にカッターで窓を作っておく。切り離さず、お蚕を入れたら閉じておくとよい。繭もこの窓から取り出す(出しにくければさらに切り開く)。いっそ中で羽化するまで見守ってもいいかもしれない。あくまで観察用。
▲テトラ簇:牛乳のテトラパックと同じ構造なので、うちではそう呼んでいる。紙を折って作り、中に熟蚕を一頭ずつ入れる。お蚕が歩き回る心配がないので虫嫌いの家族がいる家には適しているが、中がまったく見えないのでこれっぽっちも面白くはない。
折り方は簡単。半紙(B5)程度の紙を半分に切る。サイズはあくまで目安。テキトーでいいので新聞紙や折り込み広告なんかを使ってもよい。
中におかいこをいれて、上の口は底と直角に交わる方向に潰して二回くらい折って閉じる。
これで出来上がり。心配なら口をホッチキスかなんかで止めてもいいけど、そんなことしなくても出ないと思います。口が開いちゃうようなら、さらに角を折れば開かなくなります。
お蚕が中で水っぽい糞をしても気にする必要はありません。決して開けずに五日くらい放置してください。きっと繭になってます。
ただ、五日から一週間くらいで必ず開けてくださいね。それ以上ほうっておくと、中で羽化して蛾になってしまいます。
以上、趣味で使えそうな簇のアイデアでした。足場になりさえすれば、なんにでも繭を作るので、いろんなものに作らせると面白いですよ。
ここらで養蚕農家でどういうものを使ってるかも説明したいんですが、よく考えたらそういう資料写真を一枚も持ってませんでした(笑)養蚕の道具は各地の郷土資料館などには展示されてるし、撮影できるところもあったと思うのですが、子供の頃にきちんと使われている道具を見知っているので、使われずに展示されてるものを貴重だという感覚にならず、シャッターを切るのを完全に忘れていたんだと思います。そのうちチャンスがあったら資料用にどっかで写しておきます。
下のイラストは説明用に昔自分で書いたものです。
▲厚紙で作ったこういう蔟(区画簇とか、ボール紙で作るのでボール簇とかいう)を…
▲こんな枠にとりつけて、間に蚕を流し込む(ほんとに流し込む!)。それを天井からつるしておくと、蚕は上を目指して歩くので、上が重くなるとクルンと回転する。これぞまさしく回転簇。お蚕がのぼる、クルンと回る、何度もくりかえしてるうちに、お蚕は居心地がいいところをみつけて勝手に繭をつくりはじめる。
群馬の伊勢崎あたりでは回転簇を使ってました。他に蛇腹状の網を平たく置くタイプの簇もあるんですが、あれはなんて言うんだろ。藁で作ったのは藁蔟だし、樹脂製のは百年蔟(ずーっと使えるから)とか言うけれど、総称がわからないですね。藁蔟か、百年蔟で検索すると写真を掲載しているサイトがあると思います。
# 読み直したら、「簇」と「蔟」の両方の字が混在してました。養蚕用具の呼び名としてはどちらも使われます。
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