玉川村駅についた(なんてことを実は電車の中で書いてる)。手紙によればここで駅員に声をかけて自転車を借りろってことだけど、私は自転車に乗れないのである。目的地まで3キロくらい。問題ない。徒歩でも一時間かからないはず。しかし… pic.twitter.com/UGsoC5sTxv
posted at 10:04:43
駅員はたぶん手紙にあった人物なのだ。書いてあることが実話かどうかわからないけど、話しかけてみるべきなのかも。が、用事がない。窓口で座ってるおじいちゃんが長さんなのかな。
posted at 10:05:45
わたしが玉川村駅に着いた時、駅の窓口には背広を着たお爺ちゃんがちょこんと座っていた。手紙にあった長さんは彼のことなのかな、と思った。
「何処からの手紙」玉川村の物語は、消えてしまいそうな神様の話だったが、神様の独白に駅を任されている老人が出てくる。玉川村駅は無人だが、駅の掃除や切符の販売を地元の人に委託している。老人は名前を長という。何かの長ではなく、名前が長なのだ。長さんは普段、畑の世話をしているが、4日に一度、駅員になると書いてあった。
書かれている物語は、どこまで実話かわからない。ほとんどフィクションじゃないかとも思う。ただ、まったくのデタラメではなく、実際に現地に来て見ると、手紙にあったのと同じような人が本当にいたりする。玉川村だけでなく、水郡線の駅は簡易委託駅が多い。窓口に座っているのはそこらのおばちゃんやおじちゃんだ。
玉川村駅の窓口にいたお爺ちゃんは、背広をきて、なんとなくお洒落した感じに見えた。いつもこうなんだろうか。それとも、自分のことを長さんだと思って来る人たちのために、ちょっとおめかししているのだろうか。
結局わたしは、お爺ちゃんと何も話さなかった。切符を見せて「どうも」とか「通りますよー」とか言っただけ。
駅でトイレを済ませる。和式だった。鍵が壊れてるので開かないように手で押さえながら頑張った。そろそろ歩き出そう。天気が悪いのが残念。
posted at 10:09:13
うわ、夕方しか走ってない路線バスだ。 pic.twitter.com/gkWzU4vvEz
posted at 10:12:38
駅からずいぶん歩いた。地図には国道の下をくぐれと書いてある。しかし地図はこの通りの状態だ。最初に見えたそれっぽい道は舗装すらされていなかったが、google地図を見る限り、行けないこともなさそうなので進むことにした。地図にあった右折ポイントはもうひとつ先だってことは後でわかった。
国道をくぐり踏み切りを渡った先は、どこまでもまっすぐな農道だった。やはり舗装されていない。
そういえば子供の頃住んでたところもここと大差ない。ここより少し市街地に近かったかもしれないけれど、細い道はどこも砂利道で、街灯もなかったし、夜は星がきれいだった。にもかかわらず「ここには何もない、中途半端なつまらない田舎だ」と、わたしだけでなくみんな思っていた。都会は東京に行かなければないし、本当の田舎は東北や長野あたりまで行かなければないと思っていた。今考えると笑える。
あれが地図にある神社だ。google地図によれば鹿嶋神社というらしい。目的地はあれじゃない。あんなに立派な鳥居があるのに神様が消えてしまうとは思えない。
さらに歩く。この先でも曲がり角に悩んで、方向は間違っていないからと適当に歩いた。途中で道がなくなったが、畑の畔を通らせてもらい、なんとかたどり着いた。駅から50分くらいかかったと思う。
ここが目的地の横穴墳墓の入り口らしい。のんびり歩いてたら50分くらいかかってしまった。まあそれも想定済み。あわてないあわてない。 pic.twitter.com/8KBwoO5LYq
posted at 10:58:36
横穴墓がある山は、それほど高くはない。丘のようなものだ。上り口には車を数台置ける場所がある。横穴墓までは階段を昇るのだが、正直言うと帰りたくなるような急な階段だった。ステップは狭く、手すりもない。こういうのは上るより下りるほうが恐いのだ。背中には(重くはないが)リュックを背負っているし油断するとバランスをくずして真っ逆さまに落ちそうだ。
しかしここまで来て素通りするわけにもいかない。いざとなれば尻をつけば下りられるだろう。汚れてもいいようにもんぺを持っているから大丈夫。
おお、たしかに横穴墳墓だ!!! pic.twitter.com/gyWiMzxT4U
posted at 11:01:21
正式には八田雷神山横穴墓群というそうだ。古墳時代後期のものだという。穴は写真に写っている2基のほかに、半分埋もれたのがもう1基あったと思う。もしかすると草むらにもっと隠れているかもしれない。中を覗いてみたが、それほど大きくはなく、すぐ行き止まりになっているように見えた。説明板に「玄室に短い羨道を備えるのがふつうで、この横穴群の二基にも、はっきりと見られるが…」とあったが、羨道とはどこのことを言っているのだろうか。
ゆっくり眺めていたいような気もするが、座る場所もなく、次の電車のことを考えると少し急いだほうがいいかもしれない。消えてしまいそうな神様がいるお堂は、さらに階段を上ったところにあった。
そしてこれが消えゆく神様がいる祠のようだ。階段がきつかった… 降りるのも大変そう。 pic.twitter.com/6IpDa8zAtx
posted at 11:05:25
階段を上りきると、お堂の裏に出た。お堂から少し離れたところに、小学校の椅子みたいなものがひとつ置いてあった。偶然ではなく、ここに座ってみろということだ。
椅子に座ってシャッターを切ると、こんな写真が撮れる。歩き疲れて忘れていたけれど「何処からの手紙」が茨城県北芸術祭の出品作品なのだ。
階段はお堂に向かって左後ろだ。できれば下りたくないので、ほかに道がないか辺りを見回したが、昔道だったかもしれないところには倒木があり、草ぼうぼうで通れそうもなかった。やはりあの階段を降りるしかないのだな。
わたしは立ち上がってお堂に近づいた。お堂の中には、もうひとつ小さなお堂が置いてあった。扉があいており、中には板きれが倒れているだけで、ご神体はなかった。いや、もしかしたら板きれに神様の名前でも書いてあったかもしれないが、拾って見ることはしなかった。
形状からして覆い堂自体が昔のお堂だったみたいだけど、中にこんな小さなお堂があって、それすら荒らされて御神体もなくなってる。 pic.twitter.com/vrUVaN8ie7
posted at 11:08:39
そもそもどこまでがフィクションなのかわからない。この山に横穴墓があるのは本当だった。倒れそうなお堂があるのも本当だった。しかし、そのお堂の中にある小さなお堂は、もしかしたら作者が置いたかも知れない。神様は昔いたかもしれないけれど、もうとっくにどこかに移されているのかも知れない。神社が廃止され、神様が別のところに移されることは珍しくもなんともないんだから。
小さなお堂の前に小銭が置いてあった。見に来た人が置いたのだろうか。誰が回収するかわからないけれど、わたしも10円置いてきた。
それからわたしは、階段を降り始めたが、やはり途中でどうしても足が動かない場所があり、仕方なくもんぺをはいて尻をつきながらソロソロ下りた。
時計を見ると11時20分だった。次は上小川に行くつもりだが、11時59分の電車を逃すと、次は13時55分まで来ない。急ぎたくはないが駅前に店もない場所で2時間はきつい。それに、この2時間を無駄にすると、行けない場所ができてしまいそうだ。
来る時は手紙をたよりに遠回りになる農道を歩いたけれど、google地図に最短ルートを検索させたら35分くらいだという。よし、可能な限り早歩きだ。
焦らないとかいいながら、寄り道せず強行すれば11:59の郡山行きに乗れそうな気がしたので挑戦してみた。3分前に玉川村駅に着いた。そして電車は五分遅れだと言ってる。勝ったね。次は上小川駅で降りるよ。
posted at 12:00:12
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