底本
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/he13/he13_00361/
児子再生前世話(勝五郎再生前生話)
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_00361/he13_00361_p0006.jpg
壺に入られ山に葬られた時穴を掘て壺を落し
候?時とんといつた音て能?に見てゐるそれから内に
な?つて机の上にとまつていたらなんともしれぬ
じいさまのよふな人が来てつれて行と空を飛
であるいてひるも夜もなくいつも日暮方のよふ
だつけ寝?くもひだるくなかつたいくら遠く
にいつても内で念仏を唱へる声と何か話す声
ーー
が聞へた内であつたい牡丹餅を供ると鼻から
煙を飲やうであつたからおばさん佛様には
あつたい物をすへるがいゝよそして僧様にものを
やらしやいよ是がいつちいゝ事だよ夫からその
じい様がつれて此内の向ふの路を通る
と思ふたがじい様がもふ死でから三年
立たからあの向ふの家に生れろ我が
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_00361/he13_00361_p0007.jpg
ばあさまになる人は気のいゝばァ様だから
あそこにやどれといつてじひ様は先にいつて
しまつたからおらあ此家にはひらふと思ふ
て門口に居たら内に何かおつかさんが家貧
乏でおつかさんが江戸へ奉公に出ずはなるまい
といふ其相談があつたからマア這入まいと
庭に三日止まつて居た三日めに江戸へ
#じい様・じひ様と表記が揺れるのは原文のまま
ーー
出る相談がやんだから夫から其夜両戸の
ふし穴から内へいつて竃の側に又三日
居て夫からおつかさんの腹にいつた腹
のうへのほふにゐたらせつなからうとおもつて
脚?の方に□て居た事もよく覚てゐる
生れた時苦労のなかつた事もよふ覚
ているおとつさんとおつかさんにはいゝが外の
ここまでのあらすじ
「勝五郎は前世で死んだ時のことを語る。壺に入れられ、穴に落とされた時の音を覚えていること。突然現れた老人と一緒に空をどこまでも飛んだこと。どんなに離れても生前の家で唱える念仏が聞こえたこと。そして死後三年たつと、老人があの家に生まれろと言うので、今の家にやってきたことなど…」
?のついてる文字は自信のない文字
□は完全に読めなかった文字
今回完全に読めてないのは1ヶ所。
老人にうながされて今の母親の腹に入るが、腹の上のほうにいると母親が苦しいであろうから上でない場所にいたと語っているシーン。
問題は「□て居た」の部分で、「坐ていた」とか「眠ていた」「寝ていた」じゃないかとは思うんだけど、どの字もこんなくずし方をするかなあ、という感じ(強いて言えば「寝」が近い?)。
読みに自信のない文字。
葬られた時穴を掘て壺を落し[候?]時とんといつた
文字は「候」だと思うが、幼少の勝五郎が子供の言葉で祖母に語っている中、突然「壺を落とし候時」とかしこまった言い方をするのに違和感があるので別の読み方もできるのかなと。
音て[能?]に見てゐる
字は能だと思うけれど「音で能(のよう)に見ている」という解釈であっているのだろうか(どう解釈しようと、その場面が見えたという意味であってるとは思うけれど)。
[寝?]くもひだるくなかつた
死後の勝五郎が老人と空を飛んでいる間「□くもなければ、ひだるくもなかった」と言っているので、ひだるい(空腹で力の無い様子)と対になるような単語じゃないとおかしい。「う」と「を」の二文字にも読めるが、「うをし」では意味が通じないので、宀の漢字だとしたら「寝」かなあ、と類推。
[脚?]の方に□て居た事もよく覚てゐる
老人にうながされて今の母親の腹に入った勝五郎は、腹の上のほうでは母親が苦しいだろうから、上でない場所にいたと語る。上でないなら下に違いないが、この文字で下とは読まないので「あしの方」ではないかと。字形から言って脚・趺・趾(全部「あし」)あたりのどれかだと類推。
類推で埋めてる文字は別の読み方があっても不思議ないです。何か思い付いたら御意見はいただきたいです。
しかし、できればURLから原文を見てからにしてください。わたしの説明だけ見てると思い込みが発生します。
あー、「脚?の方に□て居た事もよく覚てゐる」の□は、ただの「き」ですね。考え過ぎだった><
いや、まてよ。
「希」のくずしかと思ったけれど、
それじゃ読みは「け」のはず。
うーん。
あっ、わかった。
「寄っていた」だ!!
http://clioapi.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/ZClient/W34/z_detail.php?title=%E5%AF%84&mgno=34003273&count=6&countAll=133
この書体だと点がないけど、似てる。
http://clioapi.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/ZClient/W34/z_detail.php?title=%E5%AF%84&mgno=34036783&count=16&countAll=133
こっちのは書体が少し違ってるけど点がある。
「寄」に違いない。
「□くもひだるくもなかつた」は「寒」だ!!
http://clioapi.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/ZClient/W34/z_list.php?title=%E5%AF%92&resourcetype=0
これは完全にわかりました。
[脚?]の方に → 股の方に
ですね。
股はとっさに出てこなかったな。
現在この回で疑問なのは
>葬られた時穴を掘て壺を落し[候?]時とんといつた
と
>音て[能?]に見てゐる
だけです。