解読:勝五郎再生前生話(3) #くずし字 #前世

『勝五郎再生前生話』を解読中です。文政年間(1800年代前半)の本で、勝五郎という少年が自分の前世を語り出したという実話を記録したものです。

底本
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/he13/he13_00361/
児子再生前世話(勝五郎再生前生話)

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_00361/he13_00361_p0008.jpg

人には云なさんなと云祖母此よし源蔵
夫婦に告る夫より後は両親に前生
の事共有の侭に語り夫より後には
程窪に行たい久兵衛さんの墓にやつ
ておくれと度々いふ事なれば源蔵おもふ
よふ勝五郎希望の子なればもしも其内
死ましき物にもあらず成程?程窪の
ーー
半四郎といふものありやなしやを尋ね度
ものなれば男の身として餘り跡先の考
なきやうに人のおもわくもいかゞと当正月
二十日祖母つやに勝五郎をつれて行べしと
いゝそれよりつや勝五郎をつれて程窪
村に行に此家かといへば勝五郎まだ
先\/といひ先に立て行程に此家だと



http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_00361/he13_00361_p0009.jpg

つやにかまはず驅込ゆくつやも続てはいり
先つ主人の名を問ふに半四郎と告る妻
の名をとへばしづと言ふ此内に藤蔵と
いふ子が有しや無やといへば十四年跡六つの年
疱瘡でなくなりましたと云ばつやは
初て勝五郎が云し事の誠なる事を
そんじ涙せきあへず勝五郎が前生を
ーー
覚へ話する事を具に話しければ半四郎
夫婦も誠に奇異のおもひをなし勝五郎
をいだき倶に涙にしづみ前生藤蔵を見て
六つの時より聲?色きま?よふ一段あがりたり
と云に勝五郎は向の煙草屋の屋根をゆびさし
まへかたはなかつたのあの木も無つたの□といふ
に皆其通りなれば半四郎夫婦も□□を

# 具に つぶさに
# 倶に ともに



http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_00361/he13_00361_p0010.jpg

打しと也偖其日は谷津入に帰りしが
其後も二三度半四郎方へきし實父
久兵衛墓へも参りしと也勝五郎時々おらあ
のゝ様だからァ大事にしておくれといゝ又
祖母に向ひおらァ十六で死ぬであろふ
御嶽様のおしやさしつたが死ぬはこわ
ひことではなひと云ひしとぞ両親勝五郎

#偖 さて
ーー
に手まへは坊様にならぬかといへばおらあ
坊様になる事はいやと云し

  近頃村中にては勝五郎といはず
  程窪小僧とあだ名を呼び外村よりも
  見に来る人もあればはづかしがりて
  やにわにかくれるにより勝五郎が
  直咄しは聞事不叶祖母つや


□は読めなかった文字
?がついてる文字は読みに自信がない
#より後ろはメモ

ここまでのあらすじ
「勝五郎から前世の話を聞いた祖母と両親は、とうとう程窪村に勝五郎の前世をたしかめに行く。そこには、勝五郎の話のとおり、半四郎夫婦がいて、家ののまわりの景色などもまったく一致するのだった。また勝五郎は、自分は仏様で十六になったら死ぬと言った」

 今回も読めない文字が二ヶ所あります。

(1)
スクリーンショット 0029-01-18 10.03.39
「無つたの□といふ」

 前世の家をたずねた勝五郎は、煙草屋の屋根を指さして、前にはなかったと言い、あの木も無くなったのかな、と言うシーン。

「扌不」のような文字?

(2)
スクリーンショット 0029-01-18 10.10.22
「半四郎夫婦も□□を打つ」

勝五郎の話はまったくその通りだったので、半四郎夫婦も勝五郎が死んだ息子の生まれ変わりだと確信するシーン。

 このほかに「声色きまよう」の部分がどうも自信ないです。勝五郎の声色が生前の息子に似てるという意味のような気がするけど、きまよう?

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珍獣ららむ〜 の紹介

特技はおりがみとお蚕の飼育と世の中の役にたたないこと全般です。養蚕が普通の仕事だったらニートでヒキコモリの体質から脱出できそうな悪寒がします。DQ10はほぼ引退しました…だってストーリーが完全にソロゲーなんだもの。/ちなみにわたしが珍獣を名乗っているのは1999年からで、イモトよりも古いです。ワンピースは知らん。イモトですねって聞かれるとあっちがマネだと答えたくなる。 twitter などでは chinjuh です。

解読:勝五郎再生前生話(3) #くずし字 #前世 への6件のフィードバック

  1. 珍獣ららむ〜 のコメント:

    >聲?色きま?よふ一段あがりたり

    「聲色きりよふ一段あがりたり(聲色器量一段上がりたり)」
    でした。里(り)を末(ま)と読み違えたのが敗因。

  2. 珍獣ららむ〜 のコメント:

    >あの木も無つたの□といふ

    これは見たまま「あの木も無くなったの抔といふ」でした。
    「抔」で「など」と読むそうです。

  3. 珍獣ららむ〜 のコメント:

    あとは(2)の「半四郎夫婦も□□を打しと也」ですが、
    最初は「股」のような気がする。
    「半四郎夫婦も股、□を打しと也」
    「打」以降は次のページにあるんですが、
    「折」とも読めそうな気はしますが、
    どちらにせよ意味の通るフレーズを思い付かない。

    • 珍獣ららむ〜 のコメント:

      どうも思い付かないので「みんなで翻刻」の掲示板で識者のみなさんに聞いてみてるんですが、
      >弥(いや)我を打しと也
      ではないかってことです。
      ますます確信したとか、納得したとかの意味でいいのかなあ。

    • 珍獣ららむ〜 のコメント:

      我は自我の我なので、胸を打つとか、心を打つとかの意味だって教えてもらいました。ああ、すっきりした。

    • 珍獣ららむ〜 のコメント:

      ほかの場所の「打」と比べると書体が違うので「折」じゃないかって教えてくれた人もいました。「我を折る」で自分の意見を曲げる、というような意味じゃないかと。それまで半信半疑でいたけれど、いよいよ納得したって感じでしょうか。

      「我を折る」説もかなり魅かれるものがあったんですが、ここは「打つ」のほうを残しとくことにしました。

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