フラッシュフォワード
(1) 2010年のアメリカドラマ。
(2) (1)の原作小説。1999年。
両方見たのでストーリーの比較などをメモしてみた。本当にメモで文字だらけなので暇な人だけどうぞ。あと、間違ったこと書いてたらごめんね。#注意:激しくネタバレです。ネタバレを恐れる人は見てはダメ。
米ドラマ版のストーリー
ある日全人類が一斉に 2分17秒間意識を失い「半年後」の未来を見る。FBIのマーク捜査官は未来で何かの資料を見ていた。そこへ侵入者が現れてマークを狙っていた。同僚のディミトリ・ノウは何も見なかった。自分が死んでいるからではないかと脅える。また別の同僚は、自分のせいで見知らぬ女性を殺してしまう未来を見る。マークの妻は夫ではない見知らぬ男性と愛を交わしているのを見る…望まぬ未来を見た人たちは苦悩する。FBIでは世界中の監視カメラの録画を調査。とあるスタジアムでフラッシュフォワードの最中に気を失わなかった者が映っていた…! というのが話の前半。
後半はフラッシュフォワードの原因になった実験をした科学者の話。ロイド・シムコーはまわりの反対を押し切り、フラッシュフォワードの原因が自分たちの実験であると発表してしまう。そのせいで世間からの冷たい目が集まり、自閉症児の息子が病院から追い出されそうになったりする。それを救うのが女医であるマークの妻だった。また、シムコーの共同研究者であるサイモン・キャンポスは、謎の組織とつながっており、フラッシュフォワードの最中に気を失わなかったのはサイモンであることもわかる。このあたりから話が破綻してくる。変な指輪が錨の役割をして意識が未来に飛ばなくなるとか、マーク捜査官がいつも見ている捜査の資料に未来からのメッセージがあったり、何がしたかったんだかよくわからないまま、2度目のフラッシュフォワードが起きて人々が未来を見たところで終わっている。
原作小説のストーリー
スイスの研究所。ロイド・シムコーとテオドシオス・プロコピデスが中心になり、重イオン衝突実験を行う。成功すればヒッグス粒子が検出されるはずだったが、その時起こったのは、全人類が 2分間意識を失い、その間に21年後の未来を見る「フラッシュフォワード現象」だった。望まぬ未来を見た人たちは苦悩し、中には自殺する者も現れた。シムコーの考えでは未来は不変のはずだったが、死をもって未来を変えた者が現れた。未来が本当に不変かどうか、もう一度同じ実験をして確かめることになるが、事前に告知され、安全な場所でその瞬間を待っていた人たちに、二度目のフラッシュフォワードは発生せず、かわりにヒッグス粒子が検出された。その後の調査で、前の実験中に超新星から多量のニュートリノが降りそそいでいたことがわかった。
21年後。フラッシュフォワードで見た未来の多くは実現し、また多くは実現しなかった。未来は変わるのである。あらかじめ宇宙に打ち上げられていた観測機により、3ヶ月後に同じ超新星からニュートリノが降り注ぐことがわかった。もう一度重イオン衝突実験を行った。全人類がまた意識を失ったが、その時未来を見たのは、シムコーを含むごく一握りの人たちだけだった。
以下、小説版の用語や登場人物等
CERN
スイスにある研究所。ALICE(重イオン衝突実験)でヒッグス粒子を検出しようとしてた。実験の瞬間に世界中の人類が2分間気を失って「21年後の未来」を見てしまう(これをフラッシュフォワードという、以下FFと略す)。突然のFFで離着陸途中の飛行機が落ち、車は運転手を失って衝突し、世界中で多くの死傷者が出た。
# ドラマでは半年後の未来を見る。
モザイク掲示板
FFで見た未来を世界中の人と共有するためにミチコとテオが作ったインターネット上の掲示板。モザイクという名前は、世界で初めてテキストと画像を同じウィンドウ内に表示できるようになったブラウザの名前に由来している。また、FFで見た未来をモザイクのように繋ぎ合わせるという意味もある。ちなみにこの小説は1999年発表で、ストーリー上で最初のFFが起こるのは2009年。FFで見る未来は2030年。
# ドナルド・トランプが自分の墓にするためにギザのよりも大きなピラミッドを建設中であることなどが書かれており、トランプがアメリカで著名な(しかも派手な)富豪であることが窺える。
ロイド・シムコー
主人公。物理学者。CERN勤務。重イオン衝突実験の責任者。FFで見た未来で、婚約者とは違う女生と一緒に寝ていた。ミチコを心から愛しているが、未来に破局があるならと一時は結婚を断念しかける。思い直して結婚するが、後に離婚。FFで見た女生と出会い再婚する。
# ドラマ版と違い自閉症時の連れ子がいたりはしない。ミチコが最初の妻。
ミチコ・コムラ
住友電気に勤める日本人で、シムコーの婚約者。仕事でCERNに派遣されシムコーと出会う。バツイチで前の夫との間に幼い娘(タミコ)がいる。FF中の交通事故でタミコは死亡。FFで見た未来は日本のおじの家で幼い子供と過ごしている様子。FF後、シムコーと結婚して娘(ジョーン)を儲けるが、後に離婚。FFで見た未来を共有するモザイク掲示板を発案、テオと一緒に実現する。
# ドラマに出てくるケイコのモデル(ケイコもいい大学を出て電気系の会社に就職してるので)。モデルになってるだけでケイコとはまったくの別人。ケイコは高い学歴があるのに女性というだけで仕事を与えられず、会社でお茶汲みをしていた。
ガストン・ベランジェ
CERN勤務。シムコーの上司。FFで見た未来は、反抗期の息子に乱暴な言葉をかけられ、21年分年老いた妻を見たりする。妻は現在妊娠中。つまりお腹の子が反抗期の息子である。
テオドシオス・プロコピデス
愛称はテオ。CERN勤務。ギリシア人。シムコーの共同研究者。FFで未来が見えなかった。21年後までに自分が死ぬことを悟り、モザイク掲示板を使って情報を集め始める。
# ドラマ版でシムコーの共同研究者であるサイモン・キャンポスとはまったくの別人。むしろ未来を見なかったディミトリ・ノウ捜査官(韓国系)のモデル。
ディミトリオス・プロコピデス
テオの弟で小説家を目指している。FFで売れてない自分を見て絶望する。未来が変わらないなら生きている意味はない、自分がここで死ぬなら未来は変わる…そう悩んで、服薬自殺。
# ドラマ版でアル・ゴフ捜査官が未来で自分が殺してしまう女性を救うために自殺する話にあたる。
ジェイコブ・ホロウィッツ
愛称はジェイク。CERN勤務。FFで、以前会った事のあるカナダの研究者カーリー・トプキンズと愛を交わしている瞬間を見る。
カーリー・トプキンズ
カナダの物理学者。彼女もまたFFでジェイクを見ている。
# ジェイクとカーリーの話は、ドラマ版でアル・ゴフ捜査官がロンドンから来たフィオナ・バンクスの話にあたるだろうか。しかしゴフは自殺してしまうのでジェイクのように幸せなゴールインない。
ヘルムード・ドレッシャー
最初のFFの時、7歳だった。未来では警官で、射殺されたテオが解剖されている瞬間を見てしまう。21年後、やはり警官になり、テオと再会する。
# FF当時子供だったことや、未来の謎解きに関わっていることなど考えると、ドラマ版シムコーの息子や、マーク捜査官の娘がこれにあたるだろうか。しかしまったくの別人で、普通の子供。自閉症でもサバンでもない。
チュン
香港出身の富豪。最初のFF当時70歳を越えていたが21年後の未来にも自分が生きているのを見ている。財を築くために悪事にも手を染めているが人殺しだけはしないという矜持がある。しかしFFでテオが殺害される件にかかわっている自分を見て、テオに情報を提供する。また、二度目のFF後にシムコーに接近、あることを勧める。
# ドラマ版で、香港からディミトリ・ノウ捜査官に電話をしてくるイラン系の女マフィアみたいな人がこれにあたる。
というわけで、小説の主要な設定である「実験で未来を見ちゃう」っていうのと、未来を見ちゃった人間模様を、まったく別の登場人物に当てはめて違うストーリーにしたのがテレビドラマ版なのでした。
小説は、どうしたって人の内面を深く描くし、ドラマは絵に変化を求めるものです。ドラマ版の改変は、少なくとも前半部分では成功してたと思うんですが、後半オカルトが混ざってきたところで完全にダレましたね。
【追記】
フィアット乗りのおともだちに「この本の主人公はフィアットに乗ってるんだよ」と話した。
友「アメリカならフィアット乗ってるヤツは変わり者」
私「ふむふむ。でも、舞台はスイス」
友「ああ、ヨーロッパだと安月給はフィアット乗り」
私「そうそう、日本人の婚約者よりも稼ぎがないっていう設定だった。婚約者はトヨタかなんかの日本車乗ってる」
友「やっぱりね」
なるほど、そういうものなのか。
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