新・珍獣様のいろいろ がぼちゃんねる

No.289の記事

飲み間違い

 今朝、別の薬を飲もうとして、マイスリーを間違えて飲んでしまった。マイスリーというのは10分後くらいから効き始めて、2時間後には効き目が切れる寝つき用の超短期型睡眠薬。

 どうせ暇人なので、寝てしまえばよさそうなものなんだけど、今朝はがぼ様(猫)にシイコをされて、コインランドリーに行かないと布団もない状態である。仕方なく、大急ぎで洗濯物を持って走った。乾燥機に放り込んだあたりで薬が効き始めて半夢遊状態に。飲んでから10分かかっとらん、なんつー薬じゃ。

 乾くまで30分以上かかる。待ち時間に家に帰ったら、絶対に寝ちゃうだろうし昼まで目が覚めない。っていうか布団がないので床で寝るのはイヤだ。しかたなく、寝ぼけたまま乾燥機が止まるまで待つことに。ベンチの横に週刊誌と一緒に「ゴルゴ13」の寄り抜き版みたいなやつがあったので、開いて読んでたのは覚えてる。日本人の女スパイがエシュロンという盗聴システムを探る話だった。

 そこへお客さん登場。愛想のいいおばさんだった。愛想のいいおばさんはコインランドリーの使い方を人に聞きたがる法則がある。たとえ常連であっても自分は不慣れなんだと主張しながら使い方を人に聞くのである。

「300円くらいまわせば乾くわよねー」

 そら来た。300円という的確で具体的な金額が初めてじゃないことを物語っているぞ。だいたい乾燥機に入れる金額は回す時間に比例する。そんなの洗濯物の質や量を見なきゃわからんのだし他人に聞いても意味ないぞ、とか思いながら、

「ええ、300円も入れたら大丈夫ですよー」

と答える。ボロが出ないうちに早くどっか行ってください、ほんとお願い。

 しかし、敵は愛想のいいおばさんなのである。愛想のいいおばさんというのは、必ずといっていいほど硬貨をどこに入れるのかわからないと主張する。たとえ常連であってもである。

「ここわからないのよね。お金入れるとこひとつなのに、上とか下とかボタン押さなきゃならないでしょ。わたしこないだまちがえちゃってねー」

 キタキタキター。

「あははは、良くあるんですよねー。こないだもお婆ちゃんが間違えて押してましたよー」

 もうヤケクソ・ハイ。そのネタもう飽きたわ。ここで出会うおばさんの99.9999%までが同じこと言うのよ(ちょっと大げさ)。たのむよ、早くどっか行って。

「それにしても今日は(洗濯物が)多いわ。こんなに入れて大丈夫かしら」

 しかし、願いむなしく愛想のいいおばさんは大丈夫か攻撃を繰り返すのだった。

「ああ、そしたら、こっちの大きいのを使ったらどうですか。こっちっかわの、青くて大きいのは 8分/100円だけど、こっちのクリーム色の中くらいのやつなら、10分/100円で小さいのと値段は変わりませんから。こっちでまわしたほうが乾きますよ」

 ちゃんと説明したと思うんだけど、このあたりから、だんだん記憶が定かじゃなくなってるので、おばさんも「この人なんか変、酔ってるのかしら」と思ったかもしれない。洗濯物を乾燥機につこむと、そそくさと出て行った。

 それからは、他のお客さんとも出会わず(たぶん)、寝ても起きてもいないような状態でボーっと「ゴルゴ13」を眺めていたと思うんだけど、気づいたときには乾燥機の前で洗濯物が乾いているのを確認してた。おそらくピーっという止まる音を聞いて体が自動的に動いてるんだと思う。

 洗濯物をたたんだような気がする。かかえて家に持って帰ったような気がする。布団しいて寝たような気がする。ここまでは予定通りに事が進んだような気がする。

 お昼ごろ目が覚めたら、耳に iPod のイヤホンがついてて、布団の中で落語聞いてた。電源入れた記憶なし。うへ。