Brassica rapa
カブ、ハクサイ、ツケナの仲間 日本で食用にされている葉もの野菜の大半はブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)という植物から派生したものである。中央アジアあたりが原産で、そこから中国全土、東南アジア、日本、インドなどで栽培化される うちに、色や形が変化して、これほどまでに多様多彩な野菜ができあがってしまった、と言われてる。 しかし、カブとハクサイが植物的に同じ物だなどと言われても納得しにくく、学名を調べ始めたところ資料によりまちまちで、インターネット上の各サイトではかなり混乱しており、読めば読むほど混乱して頭が痛くなってきた。 そもそも学名は二名式と言って、Name1 name2 という二語で成り立っている。Name1 は属名といい、同属の植物(生物)と言えば Name1 が共通でなければならない。また、name2 は小種名といい、ナントカ属の中の種を限定しているのは name2 である。「コレとアレは同種」と言う場合、Name1 name2 が共通でなくてはならない。 にもかかわらず、Brassica rapa(カブ) と Brassica campestris(アブラナ)を同種だなんてことを言い出す人もいるのは、campestris が rapa に改名したのを知らず、出版年も著者も違う複数の資料を参考にして書くとそういった混乱に陥るものだと想像した(わたくしは専門家ではないのでそこらに転がっているデータから分析して想像しただけであると明記しておく)。 そこで、この件に関しては小学館『食材図典』の仲間分けを採用し、それに一番近くエレガントに見える分類をしている このサイト の学名リストを信用することにした。結論としては、ここにあげたものはすべて同種 Brassica rapa で、その中をさらに細かい変種群に分類するのが良さそうである。 自分のためのメモとして、シノニムのリストなどを睨みながら細かい分類もしてみた。一部独自に解釈を加えてしまった部分があるがその場合は「こういう分類もある」と注意書きをすることにしたが、学術的なものではないので信用しないでほしい。間違ったことをしてるような気もするが、やっとスッキリした気持ちになれたので、見た人が誰も理解してくれなくてもわたくしは満足だ。うん。 |
アブラナの仲間 Brassica rapa (campestris grope) =Brassica rapa (Oleifera Group)? 和名:アブラナ、ナタネ、ナノハナ(薹の部分)、ナバナ(薹の部分)…等 種から油をとるため「油菜」と呼ばれる。薹の部分(蕾と茎)を食用にする。
ナノハナ、ナバナというと、薹の部分を 10cm くらいの長さに切りそろえたもの(葉がいくらか萎びた感じになってる)なども店で見かけるが、アブラナではなくコマツナの花であるらしい…栽培地を見たことがないので本当かどうかはわからないが。セイヨウアブラナの薹もナバナ(シンツミナ)という名前で出回るらしい。 なお、日本でアブラナと呼んでいるものには「セイヨウアブラナ」も含まれるが、東洋種のアブラナとセイヨウアブラナは染色体の数が違うので別種として扱うらしい(Brassica rapa ではないってこと。セイヨウアブラナの学名は Brassica napus)。 |
ミズナの仲間 Brassica rapa (Nipposinica Group) 和名:ミズナ、ミブナ、キョウナ…など
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カブの仲間 Brassica rapa(Rapa Group) 和名:カブ、カブラなど 中国の華南経由で西日本に渡来したアジア型と、シベリアから朝鮮経由で東日本に渡来したヨーロッパ型がある。主に根を食用にし、葉も食べる。
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ノザワナの仲間 Brassica rapa (Hakabura Group)Brassica chinensis とされることもある。 葉を食べる野菜だが、根もそれなりに大きくなる。根が肥大する蕪から作られたとも言われている。そのため蕪菜と呼ばれている。
Brassica rapa (Perviridis Group)Brassica chinensis とされることもある。
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ハクサイの仲間 Brassica chinensis とされることも ここにあげたものは、Brassica Chinensis という独立した種に分類されたことのあるもの。今はたぶん B.rapa ということで落ち着いている(?)。 不結球型(タイサイ類)、半結球型(チーフーサイなど)、結球型(いわゆるハクサイ)がある。コマツナやノザワナにも B. chinensis のシノニムがあるのでこの仲間にしてもよさそうだが分けてみた。
日本には過去に何度も導入されたようだ。明治時代に長梗で茎の白い系統のものが、第二次世界大戦前にもやはり白梗系のものが導入された。このころ農林水産省で白いのをパクチョイ、緑のものをチンゲンサイ(青梗菜)と呼び分けるよう取り決めた。
出所不明で品種名か商品名かよくわからない。チンゲンサイと B.rapa の何かとの交配種らしく、花芽のついたものを出荷する。味はチンゲンサイとほぼ同じ。 別名:中島菜、大沼菜、雪菜。仙台雪菜はこの近縁。体菜類とコマツナまたはノザワナの交配種だと言われている。どこに分類していいかよくわからないので便宜的にここにいれた。 どれも B.chinensis とされていたことがある。
Brassica rapa (Purpuraria Group) 別名:ズーサイ(紫菜)、ベニナバナ(紅菜花)。苔は薹の簡略自体らしい。その名の通り薹を食べる野菜である。紅菜苔、紫菜、ベニナバナという名前は茎が赤紫になることにちなんでいる。葉は緑色。加熱すると赤紫の部分も緑色になる。 サイシン(菜心) Brassica rapa (Parachinensis Group) 別名:シントリナ(芯取り菜)、ユサイタイ(油菜苔)。シントリナは芯(薹)を取る野菜という意味か。ユサイタイという名前はアブラナの薹ということだが、いわゆるアブラナの薹ではないらしい。英語では False pakchoi などと言う。 アスパラナ(アスパラ菜) 別名:オータムポエム。コウタイサイとサイシンの交配種。アスパラガスに似た味がするという。 半結球型 胴体がしっかり締まり、葉の部分は開いているハクサイ類。サントウサイに近いものらしいが、サントウサイは結球しない。花心、あずま山東などの分種がある。
中国山東半島芝罘地方から明治のはじめに導入された。現在これ自体はあまり見かけないがハクサイの品種改良に貢献したらしい。変種名はわからなかった。 結球型=ハクサイ(白菜) Brassica rapa (Pekinensis Group) 日本でハクサイと呼んでいるものは結球型のハクサイである。中国では不結球、半結球のものもハクサイと呼ぶことがある。たいていは長円形に結球し、茎は白く葉は緑〜黄緑。 下にあげるのは珍獣の食卓で扱ってみたい特徴のある品種のみ(つまり変わっているものってこと)。
長さ 30〜40cm になる長円筒形の白菜。葉先がいくらか広がる。 チヒリー70 これも長円筒系の白菜で、葉先はしまり、全体としてはチコリのように尖っている。 これら長細い白菜はその形から筍白菜と呼ばれている。中国の北京より期待に分布しており、日本には明治の頃から何度も導入されているが定着していない。 |
ターサイの仲間 Brassica rapa(Narinosa Group)Brassica chinensis とされることもある。 和名:ターサイ、タアサイ、キサラギナ…など 中国は宋の時代に成立した品種群とされる。日本には江戸時代後期に渡来。ターサイは搨菜と書き、押しつぶされた野菜という意味である。茎が太めでいくらか立ち上がるが上から押しつぶしたように葉が開き、全体としてみると盃型に見える。
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ブロッコレットの仲間 Brassica rapa (Broccoletto Group) 中国名は意大利菜心。イタリアサイシンの意味か。イタリアの野菜で日本ではブロッコレットと呼ばれているが、この学名を見るかぎりブロッコリー(キャベツと同種)の仲間ではない。栽培中の写真を見ても B.rapa の仲間とするのが適当と思われる。葉も花もアブラナに似ている。 似たような別物情報 ダイコンはアブラナ科で根が太くカブに似ているが、属レベルから違う別種でここには含まれない。ラディッシュと呼ばれる赤い小さなカブようなものもダイコンである。ちなみに根菜類でニンジンはセリ科でまったくの無関係。ゴボウはキク科でこれも無関係。 葉物野菜では、キャベツはハクサイに似ており同じ Brassica 属に分類されるがハクサイとは別種なのでここには含まれない。カラシナ・タカナ・ザーサイも同属だが別種なのでここには含まれない。 古くから食用にされている葉もの野菜のうち、ホウレンソウはアカザ科でまったく無関係。レタスはキク科、エンダイブもキク科。 セイヨウアブラナ(Brassica napus)
ついでなのでセイヨウアブラナの系統をメモすると、
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