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 そろそろ珍獣様の本性を発揮する時がやってきた。ハチといったらハチの子なのだ。幼虫じゃなくてハチノコ。ハチの子という名前で呼ばれる時、それは観察の対象から食料へと昇格(?)するのである。

 長野県の昆虫食は有名だが、長野でよく食べるのはクロスズメバチという土の中に巣を作るハチの子だそうだ。でも、他の種類のハチが食用にならないわけではない。地方によっては、スズメバチ、ミツバチ、アシナガバチなど、いろんなハチを食用にする。幼虫を食べることが多いが蛹や成虫も食べられる。食べられるということは知っているが、実際に食べたことはないのでどんな味かはわからない。

 昆虫食といえばカイコの蛹も有名だが、これは独特の匂いがあるので不味いと言う人と、それなりにいけるという人に分かれる。ところがハチの子の場合は見た目でキモチワルイという人はいるけれど不味いという話をあまり聞かない。

 ともあれ、苦労してとった巣が目の前にあるわけだし、論より証拠、食べてみればいいのである。それにはまずハチの子を巣から出さなければならない。

コアシナガバチの巣を壊してみる
2003年7月12日撮影

 
 さて、どうやって取り出そうか?
 スズメバチの巣のような大きなものだったら下からバーナーであぶるといいらしい。熱にやられたハチの子が自然に巣から出て落ちてくるそうだ。

 今回は蜂の巣が小さいので手で壊すことにした。巣の壁は紙か不織布のような感触で、力を入れれば破けないこともない。しかし、でっぷり太ったハチの子が巣穴にみっちり詰まっているので苦労する。下手に力を入れるとハチの子が潰れてしまいそうだ。

 潰れると料理しにくいから、なるべくそーっと取り出さなきゃいけない。優しくやってるつもりでも、ハチの子は驚いてべたべたする液を分泌する。口から吐いているのか、尻から出しているのか、それとも別の穴からなのかはわからないが、手がべたついてえらく作業しにくかった。

 巣を剥いてはハチの子を引っ張り出し、出てこないものは楊枝でそーっと突きだして、幼虫はなんとか取り出した。

蛹化寸前の幼虫
2003年7月12日撮影

 ハチの子には手も足もなくプリップリに太っている。でっぷりと転がっているだけで、ハエの蛆みたいにニョロニョロ動き回らない。気持ち悪いとは感じなかった。きれいだし、なんだか美味しそう…? これは期待できるかも!

 せっかくなので、幼虫だけでなく蛹も取り出さなければ。こっちは簡単だった。巣穴をふさぐ白い蓋をていねいに破いてから、巣穴を下にして上からトントンとたたくと落ちてくる。

コアシナガバチの蛹
2003年7月12日撮影

 蛹は成虫と同じ形をしている。幼虫の時よりスマートだ。まだ小さいけれど翅もある。でも動かない。まだ体が完全にできあがっていないから、時折身をよじる程度でじっとしている。

 けれど、一番古い穴を壊したら…

半熟コアシナガバチ
2003年7月12日撮影

 巣穴から生きたハチが出てきた。
 刺されるのではないかと一瞬身構えたが、その心配はなさそうだった。ハチの形をしているし、生きて動いてはいるけれど、翅も手足もやわらかく、人を襲う余裕なんかなさそうだった。たぶん羽化寸前だったのだ。今夜か明日にでも自分で穴から出てくるはずだったのだろう。

羽化直後のコアシナガバチの顔
2003年7月12日撮影

 獣で言えば早産のような状態で外に出てしまったわけだが、このまま育つだろうか?
 飛べるようになるまで観察すればよかったのだが、この時はすでに「食材」として見ていたので、動き回って扱いにくそうな半熟の成虫は、花壇の植物にとまらせて放置してしまった。その後どうなったのかはわからない。ちょっと残念だ。

 

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