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和名 アモルフォファルスギガス
(特に和名はないらしい)
別名 世界で一番高い花
英名
中国名
科名 サトイモ科
学名 Amorphophallus gigas
十数年に一度咲く
原産地 インドネシア・スマトラ島
撮影  東京都文京区・小石川植物園


 
 2003 年 9月13日、小石川植物園にてアモルフォファルス・ギガスが花を咲かせた…と書いたところで「なんじゃそりゃ?」ってなもんでしょうね。アモルフォファルス・ギガス(名前が長いよ)は、日本でいうとコンニャク芋の仲間で、インドネシアのスマトラ島だけに自生してる植物です。特別に和名はなくて、学名をカタカナで書いたのを和名代わりに使われているんだけど、このままじゃ長くて大変なので、ここではギガスと略します。
小石川植物園の温室
2003年9月17日撮影

 ギガスは熱帯の植物なので温室で栽培されてます。上の写真は小石川植物園の温室入り口。噂を聞いて見に来た人がギガスの説明を読んでます。なにせ自然の状態ではスマトラ島にしか生えないものなので、土作りや温度管理が本当に難しいらしいです。世界では何例か咲いてるそうですが、日本で咲いたのは今回が初めてだとか。

 リュウゼツラン同様、決して身近な植物ではないですが、身近な場所で起こった珍事ということで記録しないわけにもいきますまい。

 
アモルフォファルス・ギガス
2003年9月17日撮影
アモルフォファルス・ギガス
「えへん、これがギガスの花であります。別名を世界で一番高い花っていうらしいですぞ」 珍獣様
がぼ様 「世界で一番高いってどういうことなのかな。オレサマもーっと高いところに咲く花を知ってるぞ」

 世の中には背の高い木がたくさんあるし、高い枝に咲く花もたくさんある。でも、ギガスの花は枝に咲いてるわけじゃないのです。チューリップを想像してください。球根から花柄がにゅーっと伸びて、その先に花が一輪だけポコッと咲くでしょう。ギガスの花もそれと同じで、地下にある球根から花柄が 3 メートルも伸びて、その先に花が一輪だけ咲くのです。花柄+花の高さ(長さ)で比べると、ギガスより高いところに咲く花は世界中さがしても他にはないんだって。

ギガスの花ギガスの花
2003年9月17日撮影
 
 花の部分を拡大したものです。地面から 4 メートルも伸びて咲くものだから、梯子でもかけないと普通はこんなに近寄れません。望遠付きのカメラって便利だなあ。

 それにしても変な花。花なのに地味な色だし、槍みたいな変なものがニョキッと出てるし。でもこれ、花屋さんにあるカラーという花や、尾瀬沼にはえてるミズバショウの花と似てませんか。 ウラシマソウマムシグサカラスビシャクなんかにも似てます。実はみんなサトイモ科の仲間なのです。

ギガスの花と葉
2003年9月17日撮影

 左が花で、右のワサワサ茂ってるのがギガスの葉です。といっても、花と葉が同じ株から同時に生えることはありません。ギガスはコンニャクの仲間なので地下に立派な芋があって、ここから毎年たった一本の葉柄がニョキっと伸びてきます。葉柄の先に葉を茂らせるのですが、これはあくまで葉っぱなので、半年くらいすると葉柄ごと枯れてしまいます。それから数ヶ月地下で休眠して、また次の年に葉柄を一本だけニョキッと伸ばします。

 この繰り返しを十年くらい続けると、いつも生えてくる葉柄ではなく、花を咲かせるための花柄が生えてきます。花柄が出てきた年には葉柄は出てきません。花柄の先にはつぼみがついていて、何ヶ月もかけて 3〜4 メートルの長さまで伸びて、それからつぼみが開きます。

ギガスの根元
2003年9月17日撮影

 温室で栽培されてるので引いたところからの写真がとれなかったのですが、いちおう根元の部分だけ写してきました。ほらこの通り、茎(本当は花柄)が一本だけ生えてきてる。まわりにびろ〜んと垂れてるのは、たぶん花柄が土から顔を出す時にかぶっていた皮じゃないかと思います。

がぼ様 「十年に一度しか咲かないのはどうしてなのかな」
「またそういう難しいことを聞くんだから。そんなのギガスに聞かなきゃわかんないのよ。

 でもね、日本で栽培されてるコンニャク芋も 5 年に一度くらいしか花が咲かないのよ。サトイモもそうね。たまーにしか咲かないの。そういう植物なのよ、たぶん」

珍獣様
 
 ところで、珍獣の館をわざわざ読んでるツワモノの皆さんなら、ひょっとしてもうお気づきかもしれませんが、「世界で一番くさい花」「死人の花」と呼ばれるショクダイオオコンニャク(スマトラオオコンニャク)というのは、アモルフォファルス・ギガスの近縁種です。
 ギガスの花も本来くさいものらしいのですが、珍獣様が見に行ったときには特ににおいはしませんでした。ちょっと期待してたのでガッカリでした。
 
世界で一番高い花
アモルフォファルス・ギガス
Amorphophallus gigas
gigas = 巨大な(ギガースというのは巨人のことです)
 スマトラ原産。花柄の長さが 4 メートルにもなる背の高い花。強いて和名をつけるならセイタカオオコンニャクとでもしておくのがよさげ。

世界で一番くさい花・死人の花
ショクダイオオコンニャク(スマトラオオコンニャク)
Amorphophallus titanum
titanum = 巨大な(タイタンという巨人族の名前に由来しています)
 スマトラ原産。ギガスと似た形の大きな花をさかせます。花の部分だけ比べると、こちらもかなり大きな花ですが、ギガスのように花柄が伸びないので背の高さでは負けてます。その代わりというんじゃないでしょうけど、花に口では説明できないような悪臭があるそうで、英語では Corpse Flowe(死人の花)と呼ばれたりします。つまり、死体が腐ったようなにおいがするってこと。

コンニャク
Amorphophallus rivieri var. konjac
 奈良時代に中国から伝来したもので、もとは東南アジアの植物だったようです。おでんに入れるコンニャクは、この植物の地下にできる芋を練って固めたものです。

 学名を見ると、みんな Amorphophallus という属にふくまれていることがわかります。近い仲間だということです。学名をたよりに海外のサイトも検索してみると写真がいろいろ出てきておもしろいですよ。やってみてね。ちなみに Amorphophallus というのは変わったオチンチンという意味です。ギガスの花の写真をみれば名前の由来はわかりますよね、おほほほ。

 なお、ギガスの花は残念ながら一週間もすると枯れ始めるそうです。枯れた頃見に行くのも楽しそうですが、咲いてるのが見たい人は大急ぎでどうぞ。小石川植物園は営団地下鉄茗荷谷駅から徒歩 15 分だそうです。

 

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