養蚕 絹 シルク 繭 カイコ

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養蠶緒言
底本:早稲田大学古典籍データベース『養蠶緒言』

入力:ちんじゅう
行番号と余計な註解のないバージョンは>こちらをクリック

 同じ文字を繰り返す記号は「ゝ」「ゞ」にした。例:つゝむ、かゞる # 但し手が勝手に補完して繰り返し記号を使わずに書いてしまった部分があるかもしれない。

 同じ複数の文字を繰り返す時は、横書きでは読みにくくなるだけなので記号を用いなかった。例:一人\/ → 一人一人

 カタカナともひらがなとも取れる文字が混在している文章で、カタカナにする意味のないものはすべてひらがなに統一した。例:くハ(桑) → くは

 一ツ 二ツ のような助数詞はカタカナのまま残した。# 但し手が勝手にひらがなに改めてしまった部分があるかもしれない。

 なるべく原文に近い漢字を選んで表記したが、異体字などパソコンで表示しきれないものについては一般的な書体に改めた。

ルビは原文にあるものを( )でくくって表記した。ただし、読みやすさを優先して例のようなふりかたをした。例:蠶養ひ(こがひ)し賜ふ # 何ヶ所か解読に支障のない部分でルビをふりそびれたところがあるかもしれない。

 何ヶ所か漢文がまざっており、オリジナルには返り点と送り仮名があったがパソコンでは表記が難しいので省略した。

 当方は古文書解読暦の浅い初心者です。また、養蚕も少しかじったことがある(祖母がやっていたのを幼児期に見ていた程度)です。解読違いなど多数あると思いますので、学術にご利用の方は原典をご確認の上、自己責任でお願いいたします。当方は一切の責任を負いかねます。

 解読の間違いなど発見された方は下記までお知らせください。
ブログ:新・珍獣様のいろいろ
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※このページは等幅フォントでごらんになることをお勧めします。



表紙 : 養蠶緒言
 
一丁表 : 01 : 人生日用の。片時(しばし)も闕べからざるもの。衣食より
一丁表 : 02 : 急なるはなし。されば農事と養蠶(ようざん)のふたつ。共に
一丁表 : 03 : 神代より起たり。日本紀を考るに。天照大神は。天
一丁表 : 04 : 子の御太祖にて。いとも尊き御身ながら。姫神に
一丁表 : 05 : ておはしましてゆゑ。御自ら繰繭る(いととる)術をなし給
一丁表 : 06 : ひ。服殿に入て。神衣を織らを賜へるを始め。その
一丁表 : 07 : 大神の御孫。迩々藝尊(ににぎのみこと)は。木花開耶姫(このはなさくやひめ)の機織賜ふ。

# 賜ふ:オリジナルは「ゐ」に似たくずし方をしており、賜のつくりをくずしたものと解釈してみた。
#『電子くずし字字典データベース』で調べると「給」で良かったかもしれないとも思う。
http://r-jiten.nabunken.go.jp/
 
一丁裏 : 08 : 手もとのいさぎよきをめでて。御后となし賜ひ。
一丁裏 : 09 : 仁徳天皇の皇后磐之媛命(いはのひめのみこと)は。山城の筒木(つつき)なる蠶(こか)
一丁裏 : 10 : 室(ひや)に。わざわざ御幸(みゆき)し賜へるなど。天子皇后さへ養
一丁裏 : 11 : 蠶の業に御心をとめ賜へることかくの如し。漢
一丁裏 : 12 : 土にても礼記の祭義に。古者天子諸矦必有公桑
一丁裏 : 13 : 蠶室。と見えて天子諸矦の后妃(きさき)といへども。親ら(みづから)
一丁裏 : 14 : 桒(くは)つみ自ら蠶養(こがひ)し賜ふこと。又同し。ましていは
 
二丁表 : 15 : んや。士民の妻女に於てをや。古(いにしへ)は女功一月四十
二丁表 : 16 : 五日といへり。これ一月の晝を三十日。夜を十五
二丁表 : 17 : 日にあてたるものにて。晝夜共に繰織(いとくりはたをる)を怠らず。
二丁表 : 18 : 男の農事を勉て。租(ねんぐ)を収るに等□□。女は繰織を
二丁表 : 19 : 勉て調(みつぎ)を奉れり。是を女之手末調(をんなのたなすゑのみつぎ)といへり。手末
二丁表 : 20 : とは手の先にてする業を云なり。是に依てその
二丁表 : 21 : かみは。家ごとに桒を殖ざるはなかりけり。職員
 
二丁裏 : 22 : 令の國司の條に勧課農桒と見えて。國の守たる
二丁裏 : 23 : 人の職掌は。農と桒とを。百姓に課せてつとめし
二丁裏 : 24 : むるが第一にて。百姓たる者は。具農桒に力を尽
二丁裏 : 25 : して租調庸の三事を奉貢ざる(みつがざる)はあらざりし也。
二丁裏 : 26 : この租といふは年貢米(ねんぐまい)。調といふは絹布の類な
二丁裏 : 27 : り。孟子に五畝之宅樹之以桒とありて。百姓の自
二丁裏 : 28 : 身の宅地に桒を殖て。蠶(こ)を養へり(かへり)。さるは蠶業の
 
三丁表 : 29 : 利益。甚大にして。麻木綿の類を始め。凢百の業。一
三丁表 : 30 : つも是に及ぶものなし。故に農事とならべて。米
三丁表 : 31 : 穀に對へいへり。史記には。齋魯千畝桒其人與千
三丁表 : 32 : 戸侯等とあり。これ桑畑千畝持たる百姓は。その
三丁表 : 33 : 冨。千戸領したる大名に同しといふ意なり。また
三丁表 : 34 : 蜀志に諸葛孔明のいへる言を引て。桒八百株薄
三丁表 : 35 : 田十五頃あれば。子弟の衣食。をのづから餘饒(あまり)あ
 
三丁裏 : 36 : りとみえたり。かく利益多き産業なれば。何卒(なにとぞ)防
三丁裏 : 37 : 長两國の内にも勧課して。再興すべし。此两國の
三丁裏 : 38 : 如き。米穀は昔より。中國米の名高くして。大坂に
三丁裏 : 39 : ての建物なれば。今更これをいふに及ばす。養蠶
三丁裏 : 40 : の事に於ては。後世その傳を失ひしにや。ただ木
三丁裏 : 41 : 綿のみ織を業として。繰繭(いとくりこがひ)の道は。知る人稀なり。
三丁裏 : 42 : 木綿も毎年大坂の運送。百萬反にあまりて。莫大
 
四丁表 : 43 : の産物なれども。綿を他國より買入るヽゆゑに。
四丁表 : 44 : 百姓の身に着く利益少なし。綿を國中に殖ると
四丁表 : 45 : きは。此草は田畠ならでは生たらねば。五穀を作
四丁表 : 46 : る妨となれり。蠶桒は皇國固有の産物にして。古
四丁表 : 47 : へ防長にても蠶業の行はれし證。主計式の長門
四丁表 : 48 : の條下に。調絲と載たる・て知べし周防の條下
四丁表 : 49 : には所見ねども(みえねども)。いづくか桒土ならざらん。桒だ
 
四丁裏 : 50 : に生ずる土地ならんには。蠶の出来ぬ理はなけ
四丁裏 : 51 : ればば何卒士農工商の別なく。山野の荒地は勿論
四丁裏 : 52 : にて。宅地の垣根。溝の端(はた)。小路の側(ほとり)に至るまで地
四丁裏 : 53 : 力を尽くして桒を殖べし。古は天子諸矦の后妃さ
四丁裏 : 54 : へ。し賜へるわざなれば。貴族大身の内室も。みづ
四丁裏 : 55 : から桒つみ親ら蠶養し。それより以下の士農工
四丁裏 : 56 : 商の婦女を。みな興起をしむべし世俗の諺に。潮
 
五丁表 : 57 : 風の當る地は。蠶(こ)の生立(おひたち)冝しからず。といふ説あ
五丁表 : 58 : れども。こは蠶種(こだね)に色々(しなしな)あれば。一概に云がたし。
五丁表 : 59 : 本場といふ蠶は。海邊にてそだちがたけれども。
五丁表 : 60 : 片夏うづらの類は。潮風を撰ばずして。しかも養(か)
五丁表 : 61 : ひ易き虫なれば。これらの分別をわきまへて。山
五丁表 : 62 : 中海邊それそれに。相應する蠶(こ)を養ふべし。その育(そたて)
五丁表 : 63 : 法(かた)に至ては。養蠶局に入て傳授をうくべし。かへ
 
五丁裏 : 64 : すかへすも農と桒とは。一日も闕べからざる。民
五丁裏 : 65 : 生の本務なれば。晝夜となく怠ら・ずして。一月四
五丁裏 : 66 : 十五日の功をつとむべきものなり。
 
五丁裏 : 67 : 丁卯春
五丁裏 : 68 : 鴻城 養蠶局發梓
 
裏表紙 : 69 : (手書き文字で)児玉姓
 

主な異体字
主な異体字


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