猿カニ合戦 |
悪がしこい猿がいました。蟹(かに)がおにぎりを食べようとしているのを見て、なんとか横どりしてやろうと思いました。そこで、 「蟹さん、ちょいと相談があるんだがね。ここに柿の種がひとつある。これと君がもってるおにぎりを、とりかえてくれないかな」 と、いいました。 けれど、蟹は
すると猿が、
蟹は猿にもらった柿の種を土にうめて、
それから蟹は、、
すると今度は
ところが、蟹は木のぼりができません。しかたなく、実がうれて落ちてくるのを今か今かとまっていました。
猿はするするっと木にのぼると、よくうれておいしそうな実をもいで、むしゃむしゃ食べはじめました。
べしゃり。 柿の実は蟹に命中して、蟹はつぶてれ死んでしまいました。猿は、おいしい柿の実を食べておなかいっぱいになると、山奥へかえっていきました。 しばらくすると、蟹の死体から、小さな蟹の子供たちがぞろぞろ出てきて、母蟹が死んでいるのを見て、わんわん泣きはじめました。 そこへ、蜂と、臼と、栗がやってきて、
そうして、みんなで猿の家にいき、蟹の子は水がめの中に、蜂は味噌おけの中に、栗は囲炉裏(いろり)の灰の中に、臼は屋根の上にかくれていました。 猿がかえってくると、
「あちちち、こりゃたまらん。水でひやさなきゃ」
「いててて、なんかが手をはさんだぞ。こりゃいたくてたまらん。味噌でもつけておくか」
たまらず家からとびだすと、屋根の上から臼がどすんと落ちてきたものだから、猿は目の玉がとびだして、ぺしゃんこになって死んでしまいましたとさ。
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◆こぼれ話◆
猿蟹合戦(さるかにがっせん)、蟹昔(かにむかし)などのタイトルで知られた昔話。日本五大昔話のひとつだそうで、類話は日本だけでなくアジアやヨーロッパにもあるという。 仇討ちに参加するものにも変化があり、栗、蜂、臼のほか、馬糞や針なども加わる。 針は夜着にかくれていて、蜂にいためつけられた猿が痛いのでもう寝てしまおうと夜着を着ると体中に針が刺さる。
栃木県の昔話では蟹は殺されない。猿が木にのぼって柿をとっているのを見て「のぼるのは上手いがおりるのはどうだろう。ひとつ逆さおりをしてみせてくれ」とそそのかす。猿がふところに柿をいれて木を逆さにおりてくると、柿が懐からおちてくるので、蟹は地面に埋めて隠してしまった。怒った猿は「今夜お前の家に夜盗に入るからな」と脅して帰ってしまった。蟹がこわくなって震えていると、蜂、臼、栗が遊びに来て「そんなら我らが助太刀するから安心しろ」……と、続きは一般的な猿蟹合戦とほぼ同じ。
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