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人間の誕生
 八重山(沖縄)の伝説

 地上にまだ海しかなかった頃、太陽加那志(太陽神)がアマミキヨに命じて八重山の島を作らせました。

 八重山は本当に美しい島でした。太陽加那志の恵みをあびて島中にアダンの木が生い茂り、良い香りの実がたわわにみのっています。けれど、その実をたべて喜んでくれる生き物がいません。

 そこで太陽加那志はアダンの根元に穴をほって、その中でヤドカリをつくりました。
 ヤドカリはアダンの実をたべて育ち、島中に増えていきました。これでこの島に生き物が住めることがわかりました。

 つぎに太陽加那志は人種(ひとだね)というものを地上におろしました。人種を最初にヤドカリが出てきた穴に入れてやると、中から輝くように美しい男女の人間があらわれました。

 人間はアダンの実をたべて健やかに育ちました。そろそろいい頃合いだと思った太陽加那志は、ふたりを池の前に連れて行き、
「この池のまわりを、たがいに逆方向に歩いてゆくがよい」
と、命じました。

 ふたりがその通りにすると、ちょうど池のあちらがわの岸辺で行き会って、ぶつかりそうになったので思わず抱き合ってしまいました。

 同じ穴から生まれてきて、ずっと一緒に暮らしていた男女ですが、こうして触れあったのは初めてだったのでしょう。ふたりの気持ちは自然に近づいて、そのまま夫婦になりました。八重山に住んでいる人たちは、みなこの夫婦の子孫なのです。


 アマミキヨはアマミクまたはアマン神とも呼ばれる女神で、シネリキヨという男の神と結ばれて人類の始祖となったと言われてます。言い伝えなので異説もいろいろあって、上に紹介したお話ではアマミキヨは島を作っただけで人類の始祖となったのは別の男女みたいですね。
 

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