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うまか汁
 種子島の民話

 むかし、あるところに食いしん坊の若者がおりました。

 美味しいものを食べるのが何より好きで、
「結婚するなら美人より料理上手がええのう。うまか汁を作ってくれる娘と結婚してぇ」
と、思っていました。

 そんな若者のところに、ある日美しい女がやってきて、自分を嫁にしてほしいと言いました。若者は女の顔をじろじろ見ながら、

「おら、美人には興味ねえ。毎日うまか汁をのませてくれるんなら嫁にしてやってもええ」

と言いました。女は、そんなことならお安いご用ですと、そのまま若者のお嫁さんになってしまいました。

 それからというもの、女は若者がまだ寝ている間におきて美味しいものを作り、若者が外で働いて帰ってくる頃にはご馳走を作って待っていてくれるのでした。たいそう料理上手な嫁で、とくに汁のうまいこと。どんなに疲れて帰ってきても、嫁が作った汁を飲めば元気になり、天にものぼる気持ちになるのでした。

「一体どんな出汁を使うとこのようなうまか汁ができるんじゃろう」

 若者は不思議に思ってたずねましたが、お嫁さんはにこにこするばかりで教えてくれません。

 こうなるとかえって気になるものです。
 ある日、若者は仕事に行くふりをして嫁の様子を見ていました。

 お嫁さんは洗濯をしたり、掃除をしたり、一日中働いていましたが、夕方になると大きな鍋に水をいれてかまどにかけました。

 その時、若者はアッと声を上げました。
 お嫁さんが鍋の上にまたがってじゃーっとオシッコをしたのです。

「この性悪女め。おらに小便の汁を飲ませていたのか!」

 若者はカンカンに怒って、とっとと出て行けと言いました。
 お嫁さんは悲しそうな顔をしていましたが、言い訳ひとつせずに家を出て行ってしまいました。

 お嫁さんのあとをつけてみると、浜辺にたどりつきました。お嫁さんは大きな蛤(はまぐり)の姿になると、ぴゅーっと一筋の潮をふいて海へ沈んで行ったということです。


 これのどこがエロいのって思った人は、まだお子ちゃまですね。
潮をふくお嫁さんなんですよ。しかも、オシッコと同じところから。
昔から貝類は女性器と関係しています。今だって名器をアワビにた
とえるでしょう (^^;? それにしても、早まったまねをしたもので
す。アワビの出汁ならさぞうまか汁だったでしょうにねー。
 類話に『魚女房』というのもあります。鍋に自らの身を投じて出
汁をとる献身的なお嫁さんでしたが、正体を知った夫が汁に手をつ
けようとしないので、魚女房は海に帰ってしまいました。
 

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