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うまか汁
種子島の民話 むかし、あるところに食いしん坊の若者がおりました。 美味しいものを食べるのが何より好きで、
そんな若者のところに、ある日美しい女がやってきて、自分を嫁にしてほしいと言いました。若者は女の顔をじろじろ見ながら、 「おら、美人には興味ねえ。毎日うまか汁をのませてくれるんなら嫁にしてやってもええ」 と言いました。女は、そんなことならお安いご用ですと、そのまま若者のお嫁さんになってしまいました。 それからというもの、女は若者がまだ寝ている間におきて美味しいものを作り、若者が外で働いて帰ってくる頃にはご馳走を作って待っていてくれるのでした。たいそう料理上手な嫁で、とくに汁のうまいこと。どんなに疲れて帰ってきても、嫁が作った汁を飲めば元気になり、天にものぼる気持ちになるのでした。 「一体どんな出汁を使うとこのようなうまか汁ができるんじゃろう」 若者は不思議に思ってたずねましたが、お嫁さんはにこにこするばかりで教えてくれません。 こうなるとかえって気になるものです。
お嫁さんは洗濯をしたり、掃除をしたり、一日中働いていましたが、夕方になると大きな鍋に水をいれてかまどにかけました。 その時、若者はアッと声を上げました。
「この性悪女め。おらに小便の汁を飲ませていたのか!」 若者はカンカンに怒って、とっとと出て行けと言いました。
お嫁さんのあとをつけてみると、浜辺にたどりつきました。お嫁さんは大きな蛤(はまぐり)の姿になると、ぴゅーっと一筋の潮をふいて海へ沈んで行ったということです。
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