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三頭の獅子舞(埼玉県)
一日ぶっとおしで三日間踊りつづける!
戸ヶ崎香取浅間神社
 埼玉県三郷市戸ヶ崎2-38-1
 JR・京成金町駅からバスで20分ほど
 JR三郷駅からバスで20ほど
 [google地図で確認]

 場所がわかりにくいんですけど、金町側から行くなら京成バスで戸ヶ崎操車場行きって言うのに乗って「戸ヶ崎十字路」あたりで降りて歩く(徒歩5〜10分くらい)のがいいのかな。三郷側からだと何バスになるんだろ、そっち方面あまり詳しくないですけど「戸ヶ崎神社前」ってバス停あるはずですから、そこで降りたら目の前です。神社の前にいなげや・ダイソーなどが入った大きなショッピングモール(無料駐車場付き)があります。


 メルマガで紹介した水害を救った獅子頭のお話は、埼玉県三郷市戸ヶ崎の香取宮(正式には「戸ヶ崎香取浅間神社」というらしいです)ってところで毎年やってる獅子舞の、九番目(最後)の舞の由来で文化四年(1897年)の大水害の時のお話です。

香取宮
香取宮:正式には戸ヶ崎香取浅間神社っていうらしいですが、鳥居には香取宮って書いてあります。普段はどこにでもありそうなたたずまいですが、お祭り当日になると通りにびっしり出店が並んで「ここどこだっけ?」と思うほど賑やかです。
 獅子舞そのものの発祥はもっと古くて、天正十年っていいますから、今からざっと四百年前のことです(信長の時代ですね)。天正十年(1582年)戸ヶ崎近辺に疫病などのわるいことがつづくのを嘆き、時の領主が獅子舞を奉納したところ、不思議と悪いことが起こらなくなりました。

 以来、この獅子舞は現在に至るまで、戦争中も休むことなく毎年続けられています。一度だけ水害で祭りを中止したところ、伝染病が流行って大変だったという伝説まで残ってます。こうなると、ちょっとやそっとでやめられないんです。現在では三郷市が無形民俗文化財に指定して積極的に保存されているようです。

 現在、お祭りで奉納されている舞は九つ(九庭)あります。わたしが見てきたのは一庭目にあたる雌獅子隠しだけ。後日、弓懸かりという舞の途中を見ましたが、なんせ出し物全部を奉納すると丸一日かかってしまうので、なかなか全部見るチャンスがありません。どれも楽しい舞ですが、メインになるのはやはり九庭目の太刀懸かりだそうですから、来年は予定をきっちり組んで全部通して見たいと思います。

 お祭りは、毎年七月の第一日曜日を最終日とした三日間(金土日)だそうです。下に紹介するのは、九庭のうち一番最初の一庭目の踊りです。

朝なのでガラガラの駐車場  祭りは朝八時ごろから始まるんです。この写真は香取宮前の「いなげや」の駐車場。写真をとった時点で9:30ごろだったと思うんですけど、お祭りのせいかもう駐車場があいてました。
町並み  お祭りの舞台になる香取宮はこんな感じの街に突然あるんですけど、そのわりのかなり由緒正しい神社らしいです。

 ちなみに写真の左端に移ってるのはわたくしの家来のTです。

今日の出演者、二庭目  これは今日(7月2日)の一庭目の舞手さんのお名前です。ココの獅子舞は大獅子(おおじし)・中獅子(なかじし)・雌獅子(めじし)の三頭の獅子の舞です。

 すべての舞を終えると一日終わってしますそうで、舞手や笛の吹き手は一庭ごとに交代しながらやるそうです。

雌獅子隠し  一庭目の演目は「雌獅子隠し」もしくは「花廻り」と呼ばれてます。

 写真真ん中に見える花は牡丹だそうで、雌獅子はこの牡丹が大好きなのです。大好きな牡丹とたわむれているうちに雌獅子が行方不明になってしまい……

雌獅子隠し  これは中獅子ですが、大獅子もだいたいこんな感じで角が銀色で少し立派です。

 姿をくらました雌獅子を大獅子と中獅子が必死で探しているのですが、どうやら二頭とも花を見てうれしくなってしまうようで、花の前で喜びの舞を披露したあと花を摘んでました。 

雌獅子隠し  踊りの場の四隅に、花をつけたかぶり物をした子供がひとりずつ座ってるんですけど、特に何もすることがないみたいで、ほおづえついたりあくびしたり、かなり飽きちゃてるみたいでした。
雌獅子隠し  かぶり物を近くで写してみました。とってもきれいです。こんなのかぶってお獅子を見られるなんて、わたくしとしてはちょっとうらまやしいのですけど。
雌獅子隠し  ええと、これは大獅子、かな?
 角がちゃんと移っていないと見分けにくいです。雌獅子には角がありません。

 三頭で牡丹の花を愛でたところで終わりかと思ったら続きがありまして……

雌獅子隠し  ちょっと見づらいかな。唐草模様の風呂敷包みを持ってる獅子です。牡丹騒動が終わったら、さらに包みを発見して、これまた三頭で大喜びして拾ってました。

 一頭ずつ包みを拾っては舞うのですが、その間に横で見てる別の獅子に包みを奪われてしまうことがあるみたいです。

 舞手のひとりが子供だったりすると、大人の獅子がからかって包みを奪いにかかって、ダメダメって取り返してる様子とか見られて超おもしろいですー!!

雌獅子隠し  三頭で風呂敷包みを拾うと舞は終了です。全員並んですみかに帰りました。

 風呂敷包みの中身は、よくわかんないんですけど、たぶんご褒美のおひねりじゃないかと。うまく舞ったご褒美に用意されたものだと思います(たぶん)。

雌獅子隠し  はしっこで見てる男の子。きれいなんだけどなー、かわいいんだけどなー。でも飽きちゃってるみたい。無理もないわ、こんなの何時間も見せられたら普通の子は退屈する(笑)
 
 境内には屋台もたくさん出てとても賑やかです。夜になると人が増えて見られそうもないので、本気で見たい人は午前中からお弁当と飲み物を用意して場所取りしたほうがいいと思います。「毎年、七月の第一日曜日を最終日とした三日間」がお祭りだそうです。

演目の説明(すべて三頭の獅子の舞です)

雌獅子隠し(または花廻り)…上に紹介し写真のもの
 牡丹の野原で行方不明になった雌獅子(めじし)を探して、大獅子(おおしし)・中獅子(なかしし)が探しに行きます。←ここまでは宮司さんにもらった正式な由来諸に書いてあるんですけど、実際に舞を見ると大獅子・中獅子もミイラ取りがミイラになって牡丹の花とたわむれてるように見えます。

笹廻り(ささまわり)
 奥山に分け入った三頭の獅子。雌獅子と中獅子が先に行ってしまったのに、大獅子だけは笹藪にさえぎられて先に進めません。大獅子は激怒して笹をかきわけて無理矢理すすんで行きます。がんがれ大獅子!!

飛び恰好(とびかっこう)
 獅子たちが喜んでとびはねて昇天していく様子。

弓懸(ゆみがかり)
 三頭の獅子が悪霊退散用の弓を激しく奪い合う舞です。これは途中から見たのですが、大獅子が奪い合いに勝利して、弓と弦の間からコロンと前に通り抜けたところで「おおー!」「いいぞー!」などの歓声が上がってました。ひょっとするとどの獅子が勝利するかは決まっていないのかもしれません。

 この舞の時は、まわりで見てる人が何かのタイミングで「よいしょ!」と叫ぶんですけど、どうやら竜笛(りゅうてき:横笛)が三度同じ音をピーピーピーと繰り返したあとに「よいしょ!」らしいのが聞いていてわかったので、一緒になって声をかけてたら、となりで見てる夫婦に「この人どこの人だっけ?」みたいにヒソヒソ言われちゃいました。どうやら地元民と勘違いされたようです、うひひ。

橋渡り(はしわたり)
 山の中で橋をみつけ「これ渡って大丈夫?」「どうだろ、渡ってみる?」ってな感じで迷いながら確かめながら橋を渡る舞。

帰り恰好(かえりかっこう)
 遊び疲れた獅子たちが、空を見上げながら帰って行く様子です。

綱渡り(つなわたり)
 密林で雌獅子と中獅子が先に進んでしまいますが、大獅子は藤づる(綱)に遮られて先に進めません。激怒した大獅子は、背中の鱗で綱を切ろうとします。

烏覗き(からすのぞき)
 山奥で橋の下に大蛇がいるのをみつけ、カラスのようにはねながらのぞき見る様子です。

太刀懸り(たちがかり)
 大獅子が太刀をふるい、ふたつの湯飲みに渡した棒をぶった切ります。戸ヶ崎が洪水で沈みそうになった時、三頭の獅子頭をのせた船が対岸に渡って堤を切ったおかげで救われたという伝説をあらわしているそうです。
 獅子が見事に堤を切ったあと、厄除けのようなことをしていました。湯飲みを片付けたところに人が頭をさげて正座します。頭から首にかけて赤い布をのっけてもらって、そこへ大獅子が太刀で切るまねをします。座ってる人の顔の下に太刀を通し、最後に太刀のひらを赤い布の上におろします。ここで座ってる人は死んだふりをして転ばなきゃいけないらしいです。


 神社でもらった由来諸通りの順番で紹介しましたが、順番はたまに変わるみたいです。わたしが見に行った時には七庭目が弓懸りでした。

 一庭演じると一時間はかかるので、途中に交代や休憩を入れることを考えるとどうしても丸々一日かかってしまうようです。メルマガに紹介した洪水のお話は少なくとも夜七時か八時以降の、真っ暗になってからの演目です。祭りはそのときの気分で夜中まで続いたりするそうです。


珍獣様の語り部屋・三頭の獅子舞関連リンク
 洪水から村を救った獅子頭(「太刀懸り」の由来)
 



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