平成十六年 西暦 2004 年 甲申(きのえさる)
卯月(5月19日〜6月17日) 庚午(節入り 芒種 6/5)
旧暦 | 新暦 | 六曜 | 干支 | 月・天文 | 節気 | 祝日・行事等 |
卯月一日 | 5月19日(水) | 仏滅 | 戊戌 | 朔(新月) | ||
今日から旧暦の四月で〜す。 | ||||||
卯月二日 | 5月20日(木) | 大安 | 己亥 | |||
チェコのナゾナゾ。指が百本、頭は五つ、魂は四つ、洗礼は五つ、なんだ?[四人でひとりの死人を運んでいるところ。ひとりは死んでるので魂は四つ。] | ||||||
卯月三日 | 5月21日(金) | 赤口 | 庚子 | 小満 | ||
ブルガリアのナゾナゾ。水はなんでも運んでしまうけど、たったひとつだけ運べないものはなんだ?[水に映った影] | ||||||
卯月四日 | 5月22日(土) | 先勝 | 辛丑 | |||
フィリピンのナゾナゾ。子供の頃は着物を着ていて、大きくなると裸になるものなんだ…ってこれだけじゃわかんないと思うので珍獣様からヒント。馬にもなればトンボにもなるものなんだ。[竹(タケノコには皮があるけど竹にはない。竹馬や竹トンボになる)] | ||||||
卯月五日 | 5月23日(日) | 友引 | 壬寅 | うしかい座α流星群極大 | ||
火葬禁止令廃止の日 今日は火葬禁止令が廃止された日です。 火葬が禁止されていたなんてことを書くと、いつの話だろうって思うでしょうが、これがけっこう新しくて 1875年(明治8年)のことです。 現在の日本では人が死ぬと火葬にする家が多いですよね。火葬は日本に仏教が伝来した頃から始まった習慣です。それまでは土葬にするか遠くに捨ててくるのが普通だったみたいです。仏教が定着したからも、田舎では土葬にしてたみたいですが、都市に住む町民は火葬されてたようです。 ところが1875年(明治8年)、明治政府はいきなり「火葬はダメ、土葬にするように」と言いはじめて、しばらくの間、火葬が禁止されていたことがあるんだそうです。西洋は土葬なので日本でも…というのかと思ったら、国学者たちが「火葬は仏教の習慣、我が国の宗教は神道で土葬が基本」だって言いはじめたのが理由らしいんです。 でもこの火葬禁止令は同じ年にアッサリ廃止されてしまいます。たぶん土葬だと埋める場所をとるので実際的じゃなかったのかも。それに、日本の墓地ってたいていお寺にあるでしょ。神道式のお葬式やっても埋めて貰う場所なさそうなんです。いちおう東京府(当時は都ではなく府でした)は、お寺にも神社にも属さない場所に墓地を作って対応しようとしたみたいです。それが今の青山墓地だって話ですよ。へー。 | ||||||
卯月六日 | 5月24日(月) | 先負 | 癸卯 | |||
イスラエルのナゾナゾ。自分のものなのに他人が一番使うものは?[名前(自分の名前は自分ではあまり呼ばない)] | ||||||
卯月七日 | 5月25日(火) | 仏滅 | 甲辰 | |||
鶴岡の化物祭(天神祭) 毎年 5月25日に山形県鶴岡市では天神様のお祭りをやるんですが、これが不思議なお祭りで、男も女も派手な長襦袢を着て編笠と手ぬぐいで顔を隠して道行く人に無言で酒をふるまうんだそうです(参考> 鶴岡市湯野浜温泉のサイト )。天神様こと菅原道真公が太宰府に流される時、人々が顔を隠して別れの酒を酌み交わしにやってきたことに由来しているそうです。 | ||||||
卯月八日 | 5月26日(水) | 大安 | 乙巳 | 旧はなまつり(仏誕) | ||
チェコのナゾナゾ。そいつは固いものをやわらかくするし、やわらかいものを固くする。風とは仲がいいけど水を嫌う。これなんだ。[火] | ||||||
卯月九日 | 5月27日(木) | 赤口 | 丙午 | 上弦 | ||
百人一首の日 なんでも 1235年の今日、藤原定家が小倉百人一首をせんした撰したっていうんですけどホントかなあ(^^; とりあえずそういうことで今日は百人一首の日だそうです。 | ||||||
卯月十日 | 5月28日(金) | 先勝 | 丁未 | |||
フランスのナゾナゾ。男も女も大人も子供も、だれもかれもみんな同時にやってることは?[年をとること(息をすることってのもアリかな?)] | ||||||
卯月十一日 | 5月29日(土) | 友引 | 戊申 | |||
こんにゃくの日 5 2 9 で「こん・にゃ・く」の語呂あわせになっています。1989年に 日本こんにゃく協会 などの団体が制定した記念日だそうです。 | ||||||
卯月十二日 | 5月30日(日) | 先負 | 己酉 | |||
ナゾナゾ。それは僕んちに四つあるよ。君のうちにも四つあるはず。だけど世界にたった四つしかないっていうんだよ。なんのことだかわかる?[方位(東西南北の四つ)] | ||||||
卯月十三日 | 5月31日(月) | 仏滅 | 庚戌 | |||
今日で新暦 5 月はおしまい。明日から 6 月です。 | ||||||
卯月十四日 | 6月1日(火) | 大安 | 辛亥 | |||
今日から新暦の 6月です。学校や会社では制服の衣替えですね。 写真の日 1841年の今日、日本で最初の写真が撮影されました。オランダから輸入されたダゲレオタイプの写真機で、島津斉彬公を撮影したのが最初とされています。なお、ダゲレオタイプの写真が発明された日は 3月19日 で、こちらは「カメラ発明記念日」とされています。 | ||||||
卯月十五日 | 6月2日(水) | 赤口 | 壬子 | |||
ナゾナゾ。普通のお店はお金をはらって物を買いますが、その店へ行くとお金を払って何かを置いてくる人が多いです。さて、その店はなに?[床屋、または美容室:お金を払って髪の毛を切って置いてくる] | ||||||
卯月十六日 | 6月3日(木) | 先勝 | 癸丑 | 望(満月) | ||
ムーミンの日 6月3日の語呂合わせでムーミンの日だそうです。『ムーミン』シリーズのファンが決めた記念日だとか。 | ||||||
卯月十七日 | 6月4日(金) | 友引 | 甲寅 | |||
虫の日 6月4日の語呂合わせでムシの日。「昆虫が住める街作りを」と日本昆虫クラブが制定した記念日です。ちなみに、日本昆虫クラブは虫好きで有名な手塚治虫らの呼びかけで 1988 年に設立されたグループだそうです。手塚治虫は翌年の 2月9日に亡くなりました。 | ||||||
卯月十八日 | 6月5日(土) | 先負 | 乙卯 | 芒種 | ||
今日は二十四節気のひとつで芒種という日です。穀物を植え付ける時期で、農作業が忙しくなる頃です。 | ||||||
卯月十九日 | 6月6日(日) | 仏滅 | 丙辰 | |||
芸事を始めるのにいい日? 「芸事は 6月6日に始めると上達する」という言い伝えがあるんだそうですが、なぜそう言われるのか由来がよくわからないんです。そのことを調べようとすると、この言い伝えがあるから今日は「楽器の日・邦楽の日・生け花の日」に制定されているというページがひっかかって、答えを飛び越して発展しちゃうんですけど、どうしたものでしょう。 | ||||||
卯月廿日 | 6月7日(月) | 大安 | 丁巳 | |||
ナゾナゾ。虎を売っている人の名前は?[ウルトラマン(売る虎マン)] | ||||||
卯月廿一日 | 6月8日(火) | 赤口 | 戊午 | おひつじ座流星群極大 金星太陽面通過 | ||
金星太陽面通過 今日の 14:11 〜 金星が太陽面を通過します。金星の軌道は地球の内側にあるので、うまくタイミングが合うと太陽の前を通過するのが見えるわけです。そんなのしょっちゅう起こりそうですが、観測できるタイミングで発生するのは珍しいらしいですよ。もっとも肉眼じゃ見えないし、あんまりピンとこないかも? たぶん各地の天文台で観察会をやりそうだけど、平日なので参加しにくいですね。 | ||||||
卯月廿二日 | 6月9日(水) | 先勝 | 己未 | |||
ナゾナゾ。ビルから出てきた人の名前は?[デビルマン(出ビルマン)] | ||||||
卯月廿三日 | 6月10日(木) | 友引 | 庚申 | 下弦 | (入梅) | 庚申 |
今日は雑節のひとつで入梅です。そろそろ梅雨入りするんじゃないかなって感じの時期です。 この「入梅」という日がややこしい日で、旧暦では芒種のあとの最初の壬の日(今年は 6月12日)とされているのですが、気象学的には太陽が黄経 80 度を通過する日(今年は 6月10日)ということになってます。高島易断の暦などは気象学的な入梅を採用してるみたいですね。 時の記念日 『日本書紀』によれば、天智天皇の十年(671年)の旧暦四月二十五日、漏剋(漏刻)と呼ばれる水時計を使って日本で初めて時を知らせたということです。漏刻は、四つの箱を階段状にならべて、上から少しずつ水を流し、箱の中にたまる水の量で時刻がわかる仕組みだそうです。671年の旧暦四月二十五日を太陽暦に換算すると 6月10日になるので、この日は時の記念日と言われています。 | ||||||
卯月廿四日 | 6月11日(金) | 先負 | 辛酉 | |||
ナゾナゾ。醤油を売っている人は?[キッコーマン(そのまんまやんか)] | ||||||
卯月廿五日 | 6月12日(土) | 仏滅 | 壬戌 | |||
ロシアのナゾナゾ。どんな人でも「はい」と答えられない質問はなに?[あなたは寝ていますか?(寝てたら答えられないから)] | ||||||
卯月廿六日 | 6月13日(日) | 大安 | 癸亥 | |||
アイルランドのナゾナゾ。なんでも作れる神様でさえ、絶対に作れないものはなんだ。[間に谷のないふたつの山] | ||||||
卯月廿七日 | 6月14日(月) | 赤口 | 甲子 | |||
日記の日 1942年の今日、アンネ・フランクが日記を書き始めました。これを記念して今日は日記の日ということになっているそうです。 | ||||||
卯月廿八日 | 6月15日(火) | 先勝 | 乙丑 | |||
ナゾナゾ。大きくなればなるほど小さくなるものなんだ。[服(着る人が大きくなると、服は小さくて着られなくなるから)] | ||||||
卯月廿九日 | 6月16日(水) | 友引 | 丙寅 | こと座β流星群極大 | ||
和菓子の日 848年の今日、仁明天皇が 16 個の菓子を供えて疫病退散と健康と幸福を祈願しました。これはやがて宮中行事となり、江戸時代には武家にもひろまり 6月16日に 16 枚の小銭でお菓子を買って縁起を担ぐようになりました。このことから、今日は和菓子の日と呼ばれています。 | ||||||
卯月卅日 | 6月17日(木) | 先負 | 丁卯 | |||
ナゾナゾ。みんなが私の頭をたたきますが、誰も叱りません。私は細くて小さいけれど、大きな仕事をします。私は誰?[釘] | ||||||
皐月一日 | 6月18日(金) | 大安 | 戊辰 | 朔(新月) | ||
今日から旧暦の五月でーす。 | ||||||
皐月二日 | 6月19日(土) | 赤口 | 己巳 | |||
ナゾナゾ。みんなが私の腹をたたきますが、誰も叱りません。私の腹をたたいてみんなが喜んで歌ったり踊ったりします。私は誰?[太鼓] | ||||||
皐月三日 | 6月20日(日) | 先勝 | 庚午 | 父の日 | ||
父の日 今日は新暦 6 月の第三日曜日で父の日です アメリカでアンナ・ジャービスという人がカーネーションを配って「お母様に感謝しましょう」と言いはじめたのは 1907年のことですが、それから 3 年後の 1910年、アメリカのワシントン州に住むジョン・ブルース・ドット夫人が亡くなった父親に感謝をささげるパーティーを開きました。 ドット夫人のお父さんはウィリアム・ジャクソン・スマートという人で、南北戦争で戦った兵士でしたが、戦後の混乱の中で妻を失い、6 人の子供たちを男手ひとつで育てました。スマート氏の末娘だったドット夫人は亡き父の墓前に赤い薔薇をささげて感謝し、そのことが話題になって 6月の第三日曜日がお父さんに感謝する日とされたのだそうです。 父の日が正式に祝日とされるようになったのは 1972 年、ニクソン大統領によって決定されたことだそうです。あくまで「正式に」祝日になった日であって、それ以前にも人々は父の日にお祝いをしていたと思います。 | ||||||
皐月四日 | 6月21日(月) | 友引 | 辛未 | 夏至 | ||
今日は二十四節気のひとつで夏至。一年で昼が一番長い日です。 | ||||||
皐月五日 | 6月22日(火) | 先負 | 壬申 | 旧端午の節句 | ||
今日は旧暦の五月五日、端午の節句でございます。チマキを自作したいのですが竹の葉っぱが手に入りません。 ボウリングの日 1861年の今日、日本はまだ江戸時代でしたが、長崎の出島(外国人居留地)に日本初のボウリング・サロンが開設されました。このことは出島で発行されていた英字新聞「ザ・ナガサキ・ショッピング・リスト・アンド・アドバタイザー」に記録されているそうです。 | ||||||
皐月六日 | 6月23日(水) | 仏滅 | 癸酉 | |||
ナゾナゾ。晴れた日には着物を着て、雨の日には裸になるものなんだ。[物干し竿] | ||||||
皐月七日 | 6月24日(木) | 大安 | 甲戌 | |||
UFOの日 1947年の今日、アメリカの実業家アーノルド・ケネス氏が自家用機で飛行中に、明るく光るコーヒーの受け皿のようなものが、ものすごい速さで飛びまわっているのを目撃しました。この飛行物体は最初フライング・ソーサー(空飛ぶ皿)と呼ばれましたが、その後いろんな人が「わたしも似たようなものを見ました!」と言うようになって、アメリカ空軍は正体のわからない飛行物体のことを UFO(Unidentified Flying Object)と名づけました。未確認飛行物体という意味です。 | ||||||
皐月八日 | 6月25日(金) | 赤口 | 乙亥 | |||
救ライの日 今日は救済ライの日です。ライ病の予防と患者さんの救済に理解をよせた貞明皇后(大正天皇后)の誕生日にちなんでいるそうです。 ライ病については ここらへん をどうぞ。 | ||||||
皐月九日 | 6月26日(土) | 先勝 | 丙子 | 上弦 | ||
ナゾナゾ。お姫さまが 99 枚の着物を着ていました。99 枚目の着物の色は何色?[白(99 は百から一を引いた数字だから)] | ||||||
皐月十日 | 6月27日(日) | 友引 | 丁丑 | ポン・ウィンネッケ流星群極大 | ||
ナゾナゾ。木の上に立ってお月様を見ているもの、なんだ。[親(部首を分解すると「立・木・見」になる] | ||||||
皐月十一日 | 6月28日(月) | 先負 | 戊寅 | |||
ナゾナゾ。その文字は逆さにすると半分増えます。これなんだ?[6(逆さにすると9なので)] | ||||||
皐月十二日 | 6月29日(火) | 仏滅 | 己卯 | |||
ビートルズ来日記念日 1966年の今日、イギリスのロックグループ「ザ・ビートルズ」が来日しました。ビートルズといえば『イェスタデー』とか『オブラディ・オブラダ』とかが音楽の教科書にも当たり前のような顔をして歌が載ってたりするので、今時の子供たちにとっては古典的な唱歌のひとつくらいの感覚かもしれないんですけど、当時はコンサート中に観客が興奮のあまり気を失って倒れるような、とんでもない人気グループだったんです。 それほど大人気だったビートルズの、最初で最後の来日コンサートで前座をつとめたのは、あの「ザ・ドリフターズ」だったというのも有名な話ですよね。 | ||||||
皐月十三日 | 6月30日(水) | 大安 | 庚辰 | |||
今日で新暦 6 月は終わり。明日から 7 月。本格的な夏到来。 各地の神社で大祓神事(おおはらいしんじ)というのをやっています。 形代(かたしろ)といって、人の形に切り抜いた紙で体をなでて神社に納めたり、茅(ちがや)で作った大きな輪をくぐり抜けて厄払いをします。スサノオの伝説に由来した行事だそうです。伝説につては ここらへん をどうぞ。 |
参考文献 今月のナゾナゾは
『赤のなぞなぞ』
『黒のなぞなぞ』
を参考にしました。世界のなぞなぞを集めた本なんですが、同じような傾向のものを集めてあったり、答えが同じになる各国のなぞなぞを並べてあったりして、ちょっと楽しいですよ。 ライ病って何? 意味があろうがなかろうが、ダラダラ書かなきゃいけないこのコーナー。今月は祝日もないし、あんまりネタがないんだよう。 うーん、どうしようかな。ええと、そうそう。今月は救ライの日があるので、ライ病(癩病)の話をしましょうか。 ライ病というのは、癩菌によって起こる伝染病で、古くから恐ろしい病気として恐れられていました。癩菌の発見者であるハンセンにちなんでハンセン病、ハンセン氏病と呼ばれることの方が多いです。 『ブラック・ジャック』の愛読者だったらドイツ語のレプラ(Lepra)という名前でも知っているかもしれませんね。BJの父親の後妻がレプラで、病気そのものは治ったものの、変形した顔がもとにもどらなかったという設定でした。『もののけ姫』の映画の中で、顔に包帯をまいて鉄砲鍛冶をしてた人たちも、たぶんライ病患者という設定なんだと思います。 レプラという言葉は、もとをたどるとラテン語源で「卑しいもの」という意味だそうです。かつてこの病気は原因不明で治療法もなく、本当に恐ろしいものとされていました。ライ病になると体のあっちこっちが変形したり、麻痺が起こったりして、さらには手足がグチャグチャに溶け落ちてしまうなど、見た目にも恐い症状が出てしまいます。病気そのものが治っても、溶けてしまった手足はもとにはもどりませんから、そりゃあ恐かっただろうと思うんです。そのため、キリスト教でも仏教でも、この病気はその人が犯したなんらかの罪によって起こる天罰だと考えていました。 旧約聖書に『ヨブ記』もライ病と深い関わりのある話です。 主人公のヨブはたいそう信心深い人でした。悪魔が神様のところへ行って「ヨブがあんたを崇拝するのは、あんたがヨブに良くしてやってるからだろ。ちょっと悪いことがおこれば、ヨブだってあんたのことを悪く言うようになるさ。ためしに恐い病気にでもしてみちゃどうですか」と言いました。そこで神様はヨブを恐ろしいライ病にしてしまうんです。 ヨブは悪い腫れ物だらけになって体中がかゆいので、土器のかけらで体をかきむしりながらゴミ捨て場に座り込んでいました。ヨブが病気になったと聞いて友人が訪ねてきましたが、その姿があまりに変わり果てていたので近づくことさえできず、自分の着物を引きちぎって声をあげて泣き、七日のあいだ言葉もなくその場にすわり続けていたというのです。 ところがヨブは神様を悪く言うどころか「神様にはいつもお恵みをいただいてる。時には悪いこともいただかねばならないさ」と言って信仰を捨てなかったので、のちに神様はヨブの病を治し、前よりもずっと豊かな暮らしを約束してくれるのでした。 仏教では、たとえば『法華経』というお経の中に、法華経を大事にしている人をあざ笑う人はライ病になると書かれていて、この病気が仏法に対する罪のために起こるのだと言っています。そのため昔話などでも、ライ病のお姫さまが船にのせられ海に捨てられた話などがあったりします。 八幡浜市白石の伝説では、京都のお公家様の姫君がライ病になり、うつぼ船にのせられて流れてきました。そこで人々は姫君のために静かな小屋をたて、かわるがわる食べ物をさしあげました。姫君は人々がライ病にならないようにと、石に法華経を書き写し、亡くなったということです。このお姫さまの魂をなぐさめるために作られた姫塚が三瓶町鴫山というところに今も残っているそうです。 原因不明の病気だったライ病は、やがてハンセンによって癩菌が発見され、天罰などではなく風邪などと同じ伝染病だということがわかりました。ところが、日本では、その発見がかえって悪い方向へ進んでしまうんです。伝染病なら誰かれかまわず移るんじゃないか。あんな忌まわしい病気を移されてたまるかというので、ライ病になると強制的に施設に入れられて外へ出してもらえないという法律まで作られました。 やがて病気についての研究がさらに進んで、移るといっても感染力はたいしたことはないことがわかりました。手足が溶けるというのもライ病のせいで溶けるのではなく、感覚が麻痺しているので怪我をしても気づかずに放っておいて傷が化膿して腐ってしまうせいだというのもわかってきました。ライ病の多い国や地域は飢餓に悩んでいることも多く、体力がないので病気やケガがひどくなってしまうというのも症状をひどくする理由のひとつのようです。1949年(昭和 24 年)にはライ病の特効薬も作られて、きちんと治療すれば必ず治るし、隔離する必要さえない病気だということもわかってきました。 にもかかわらず、日本ではライ病の隔離政策をやめませんでした。今年の春に『砂の器』という小説がドラマ化されましたよね。ドラマでは主人公の父が大量殺人の犯人ってことになってましたが、原作は昭和初期の話で主人公の父親がハンセン病患者という設定だったと思います。患者さんたちは外出も許してもらえないような状態が何十年も続いてしまいました。 明治時代に作られた「らい予防法」という古い法律は、その後もずっと効力を発揮しつづけ、正式に廃止されたのは 1996年ですから、本当につい最近のことなのです。 法律はなくなったものの、この病気に対する誤解はいまだに残っていて、今年の春にはハンセン病療養所入所者が熊本のホテルで宿泊を拒否されて大騒ぎになったことがありましたよね。ハンセン病に対する理解はまだまだ足りないみたいです。 そういうわけで、日本人は意味のない法律で病気の人たちを何十年も不自由な目にあわせてしまったってこと。しかも何百年前とかじゃなく、8 年前まで続いてたってことを覚えておいてください。 そういえば、今思い出しました。はなはだしく蛇足ですが、西丸震哉って人の本で『さらば文明人〜ニューギニア食人種紀行』っていうのがあるんですよ。その本にもハンセン氏病で手(足だったかも)の指が腐り落ちてしまった女の子が出てくるんですが、西丸氏は「病気そのものは大したことない。治療して栄養をつければこれ以上ひどくならないだろう」といような意味のことを言って、女の子が治療をうけられるように手配したという話がチラッと出てくるんです。30 年くらい前の本ですが、ハンセン氏病に対する正確な知識が垣間見られるような気がしましたよ。っていうかこの本とっても面白かったです。ついでだから通販ページにリンクしてやるーと思ったんだけど、品薄(というか品切れか?)で注文できないっぽいです。興味のある人は図書館で探してみてください。 …と思ったら、やったね、通販できるようになりました。 『さらば文明人〜ニューギニア食人種紀行』 わたくしこの本を読んで西丸に惚れました。あなたもこの本で西丸の魅力にどっぷり浸かってください、ふふふ。 |